スカイツリーからのテレビ電波が正しく受信できない難視聴世帯の「あぶり出し」のため、試験放送が連日おこなわれ、インターネット上ではそのせいでアニメが見られないなどと怒る人が続出している。
こうした工事などの必要な「要対策世帯」の数は当初の想定以上で、対策が遅れれば、2013年5月に予定されていた東京タワーからのテレビ送信所の移転が、またもや先延ばしにされるのではとの懸念が強まっている。
「プリキュア映りません。スカイツリー死んでください」
NHKや在京民法5局からなる「東京スカイツリー移行推進センター」は4月に入り「受信確認集中テスト」を実施している。ほぼ連日、午前と午後に2回、東京スカイツリーから電波を発信し、よく映らない場合にはコールセンターに電話するように呼びかけるものだ。
この試験を受け、ツイッターなどのインターネット上にも、画像が乱れ、ほとんど見られなかったなどという苦情や、実際にその画面を写した写真などが相次いで投稿された。
「先週はこの時間から急にスカイツリー電波のテストとかでウィザードとプリキュア見れなくなりましたね(憤慨」(3月31日)
「プリキュア映りません。スカイツリー死んでください」(4月21日)
仮面ライダーウィザードはテレ朝系で日曜朝8時から、プリキュアは同8時30分から放送されている。この時間帯は「ニチアサ」と呼ばれ、ネット上にも視聴者が多くいる。3月末から4月にかけて、テストは日曜朝8時~9時にも実施されたため、完全に重なってしまったようだ。
また、移転をしない局でも、スカイツリーからの電波が強すぎて入らなくなるという例もある。
「大事な時に勝手にスカイツリー電波テストしないで~。録画しといとやつが音ブチブチ、画像乱れまくりではないか(怒) いつのまにかMXは見れなくなってるし(# ゚Д゚)」
「スカイツリーの電波が強すぎて千葉テレビ、群馬テレビ、放送大学が見えなくなり、テレビ埼玉も信号レベルが低下。放送大学はスカイツリーに移転しないから深刻」
27日付けの産経新聞によると、こうした、東京タワーからのテレビ電波と東京スカイツリーからのテレビ電波の両方を正しく受信できるようにするための作業が必要な「要対策世帯」は22日までの累計で10万2175件だった。このうちの約 7割が工事済みまたは工事予定という。
なお、「東京スカイツリー移行推進センター」によると、工事はコールセンターに電話をし、電波状況を調べてもらった上で、無料でできる。
5月不可能説も・・・フジ社長「私は日本人を信じている」
こうした状況を受けて、「5月移転は無理なのでは」という説が頭をもたげはじめた。
TBSの井川泉執行役員は4月24日の会見で「(難視聴世帯の)あぶり出しのピークは越えた」と説明しているが、一方で、直前の週末2日間で約4000件の要対策世帯が追加で判明している。ゴールデンウィークの残り4連休にも集中的にテストを実施するため、さらに増える可能性もある。
総務省は移転を許可する際の条件として、「周知広報の実施、相談窓口の設置」のほか、とりわけ「(難視聴世帯への)対策工事の実施」を掲げており、これがクリアできない限り、移転を容認しない考えだ。さらに具体的に「(受信障害が)1日数百件に減るのが収束の目安」(23日付日本経済新聞朝刊)という話もある。
23日付の日本経済新聞はまた、大型連休で対策工事が滞れば、延期の可能性も出てくるとし、「5月を逃せば9月にずれ込む公算が大きい」との見方を示す。
「移転から約1か月は試験放送を見なかった世帯などで受信障害が発生する。このため参院選の政見放送などを流す7月だけでなく、1か月前の6月も移転は難しい。夏休みで視聴者が不在がちの8月も本格的な試験放送を実施できず移転は困難だ」
こうした推測を背景にしてか、26日にはフジテレビの豊田浩社長から、
「私は日本人を信じているんですが、最後は力を出してやれるんじゃないか。5月末という目標は捨てないで頑張っていきたい」
との「神頼み」発言まで飛び出していた。
そもそも、東京タワーからスカイツリーへの地上デジタル放送の送信所移転は、1月の予定から5月にずれ込んでいた。スカイツリーは東京タワーの2倍近い高さがあるため、ビル影などによる電波障害が減るとの触れ込みだった。ところが、アンテナの向きを変更する必要があったり、電波の入りが悪くて増幅器を使っていた家庭では電波が強すぎて障害が起きたり、など障害報告が想定より多く、対策のため猶予が設けられていた。