学生寮なのになぜか機動隊が家宅捜索。その様子を寮生がツイッターで実況、しかも撤退する機動隊を追いかけてマラソン大会――京都大学の学生寮「熊野寮」が、今話題になっている。
京大の本部キャンパスから歩いておよそ十数分、平安神宮が面するのと同じ丸太町通沿いに、背の高い木々に囲まれた古びたコンクリート作りの建物がそびえたつ。人によっては廃墟と勘違いしそうなこの建物こそが、京大熊野寮だ。
寮生の合議による「学生自治」を頑として守る
熊野寮は1965年に誕生した。鉄筋コンクリート4階建ての寮舎3棟からなり、定員は422人としている。一部屋で複数人が共同生活を送っており、家賃は月4100円。男女、また国籍を問わず、多くの学生たちが暮らしている。
その特色は、今なお学生による「自治」を貫徹していることだ。近年の学生寮は大学、あるいは民間業者が運営に当たるところが多いが、熊野寮では寮生の合議による「学生自治」を守っている。
そのせいか、建物の中にはまるで学生運動全盛期のような雰囲気が漂い、雑然とした壁に躍る「アジビラ」や「ゲバ字」の痕跡は、今が2013年ということをうっかり忘れそうになる。実際、大半の寮生はいわゆるノンポリだが、いまだに「現役」の中核派が寮を拠点に活動しているといわれ、新入生を毎年驚かすエピソードのひとつだ。
ほかにも、寮祭に合わせて京都市内の中心部で「運動会」を開催する、同じく京大の寮である吉田寮と「ストーム(旧制高校時代から存在する一種の乱痴気騒ぎ)」を今もなお繰り広げているなど、挙げれば切りがない。「自由の学風」と呼ばれる京大だが、その「自由さ」を象徴する空間のひとつと目されている。