日産に「出遅れ感」 ルノー経営不振で低下するゴーン社長の「神通力」?

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   円安による業績回復に沸く自動車メーカーにあって、日産自動車の「出遅れ感」が強まっている。足を引っ張っているのが資本・業務提携先の仏ルノー。カルロス・ゴーン社長のお膝元だ。

   ギリシャに端を発する債務危機の影響で景気低迷が続く欧州で、経営不振にあえぐルノーはリストラ策が思うように進まないようなのだ。

ルノーの経営不振、今度は日産が助ける順番

日産「ノート」は好調に売れているが…(写真は、日産自動車のホームページ)
日産「ノート」は好調に売れているが…(写真は、日産自動車のホームページ)

   1999年に日産の44.4%の株式を保有し、事実上の傘下に収めたルノーから、最高執行責任者(COO)として派遣されたカルロス・ゴーン氏(2001年6月、社長兼最高経営責任者に就任)。日産とルノーのあいだで、エンジンやトランスミッションなどの部品を共通化するなどで両社のコストダウンを進め、国内では日産の村山工場(東京都武蔵村山市)や京都工場(京都府宇治市)などの生産拠点の閉鎖や子会社の統廃合、余剰資産の売却に早期退職制度による人員削減と大胆なリストラ策を次々と実施。「コストカッター」の異名をとった。

   円高が進行すると、海外拠点での生産比率を高めて国内では「逆輸入車」を走らせた。中国市場への進出にも積極的。ブランドイメージも一新するなどの手を打ってきたことで日産の業績は「V字回復」した。

   ところが、今度は仏ルノーが経営不振に陥った。ルノー日産によると、2012年の世界販売台数は前年に比べて0.9%増の810万台で、過去最高を更新した。このうち、日産は暦年で過去最高となる5.8%増の494万台。しかし、欧州の景気低迷の影響でルノーは6.3%減の255万台と落ち込み、そのために世界販売ランキングは11年の3位から4位に後退した。

   こうしたことから同社は2013年1月に、16年までにフランスの国内従業員の約17%にあたる8000人の人員削減を発表。ゴーン社長のリストラ提案に、労働組合は猛反発。パリ市内では大規模なデモが発生した。

   「従業員のクビを切るなら、自分の高い報酬も減らせ」「経営トップを代えろ」といった、ゴーン社長への批判は高まるばかり。その声は、ルノー株を15%保有する大株主のフランス政府からも聞こえてきた。4月22日付の日本経済新聞によると、モントブール産業再生相が「ルノーの業績が悪いとき、日産がルノーを手助けするのは当然」と発言し、圧力をかけた。ルノーの経営不振に、今度は日産が助ける順番というわけだ。

EV戦略は「先を急ぎ過ぎた」のか?

   ルノーに比べて、日産は好調だ。2012年3月期決算では純利益でトヨタを上回り、国内トップだったが、12年になっても9月に投入した新型のコンパクトカー「ノート」も販売台数を伸ばしている。12年度の新車販売台数は11万5530台で、前年度に比べて104.3%増と大きく伸び、年間ランキングの4位に入った。

   とはいえ、「ノート」は低燃費ガソリン車だ。年間ランキングで5位に入った「セレナ」(前年比2.3%増、9万5869台)もハイブリッド車(HV)で、日産が力を入れている「ゼロ・エミッションカー」(電気自動車、EV)の「リーフ」ではない。

   周知のように、年間ランキングの1位にはトヨタ自動車の「アクア」、2位には「プリウス」、3位にはホンダの「フィット」とHVが並ぶ。

   トヨタやホンダなどがHVを強力に推進するなか、日産はHVを飛び越えて、EVを推しているものの、1回の充電での航続距離が短いことや充電器(スタンド)の設置場所が少ないこと、販売価格も高いことから、なかなか「火がつかない」。

   日産のEV「リーフ」の販売台数は、2012年(暦年)で前年比22.0%増の2万6976台。10年12月の発売以来の累計販売台数は4万9117台になる。ただ、計画を大きく下回っていて、ゴーン社長もEV市場について「失望している」と漏らしたほど。EVに舵を切ったゴーン社長に、「先を急ぎ過ぎた」との見方もある。

   日産は2013年4月19日から、国内で販売する「リーフ」の価格を改定し、一律約28万円値下げした。値下げでEV市場を広げる狙いだが、EVへの投資を回収できないと、ルノーの支援どころではないのかもしれない。

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