米ネバダ州に本社を置く資産運用会社「MRIインターナショナル」が、顧客から預かった資産約1300億円の大半を消失したことがわかったが、日本での被害がそのほとんどを占めるようだ。
MRIが富裕層などに販売していたのは、「MARS投資」と呼ばれる投資商品。米国のMARS(Medical Account Receivables、診療報酬請求債権)を運用対象とした金融商品を指す。日本ではなじみが薄いが、経済アナリストの小田切尚登氏によると、「米国では一般的で、めずらしくありません」という。
米国では一般的な「MARS投資」で被害に
MRIインターナショナルが手がけていたのは、診療報酬請求債権(MARS)への投資ビジネス。「MARS投資」は、MARSを運用対象とした投資商品で、一般的には病院や診療所などの医療行為に対する診療報酬を証券化した医療投資やレセプト債をいう。
日本のような国民健康保険制度がない米国では、民間の保険会社が医療保険を提供している。保険の種類ごとに医療機関が受け取る金額が異なるので、診療報酬の請求手続きが煩雑だったりする。
そこでMRIのような、診療報酬の請求を専門とした債権回収の代行ビジネスが存在。医療機関から「MARS」を低価格で買い取り、保険会社から回収を代行する。債権回収会社(今回の場合はMRI)はファンドを立ち上げてMARSを買い取る資金を投資家から募集。投資家は債権回収会社による債権買い取りと回収金額の差額の一部を、配当金として受け取る仕組みになっている。
MRIが募った商品の投資金額は150万円と750万円、1500万円の3コースで、ドル建てと円建ての2種類。円建てで年6%~9.6%、ドル建て年6.5~10.32%の高利回りをうたっていて、運用期間も2年、3年、5年を用意していた。米国で運用するためのカントリーリスクやMARSの買い取り価格が変動するリスク、為替リスクも発生する可能性がある。もちろん元本保証のない、ハイリスク・ハイリターンの商品だ。
出資金の大半を運用には回さず
証券取引等監視委員会が2013年4月26日に強制捜査に乗り出したMRIインターナショナルには、金融商品取引法に違反した疑いがかかっている。
誇大広告によって募集した出資金の大半を個人投資家に約束した運用には回さず、他の投資家への配当金の支払いに流用していた疑いだ。また、資産合計などについて実態とは異なる数値を記載した事業報告書を財務局に提出した虚偽記載の疑いがある。このほか、投資信託や投資ファンドのように、投資資金を調達して組成したファンドごとに分別管理を行っていると、虚偽の説明をして投資家から資金を集めていた可能性も出ている。
証券監視委によると、被害にあった個人投資家は約8700人、預かり金で1365億円。MRIは本社のある米国の銀行に開設した口座に、投資家が直接出資金を振り込み、そこから配当を受け取る仕組みをとっていた。しかも、米国では募集せず、資金集めは日本国内でしか行っていなかった。
そんな中で、2011年以降は実際の運用も行われていなかった可能性があるという。
MRIは4月26日、ホームページにコメントを掲載。「調査に協力してまいります。お客様にご心配をおかけしておりますことを、深くおわび申し上げます」と謝罪した。