麻生太郎副総理兼財務相が、外遊の際にみせるソフト帽に黒いコートの独特な着こなし。「まるでマフィアのよう」と国内外で話題になった。
注目度が高いためか、「麻生ファッション」をかたどったTシャツまで登場。販売業者に聞くと、幅広い年齢層で人気だという。
「群を抜いて売れています」
黒のソフト帽を目深にかぶり、視線は落とし気味。全身黒づくめで両手をコートのポケットに突っ込む。Tシャツに描かれている麻生副総理のイラストだ。その上には、英語でこんな言葉が被せられている。
「ギャングスタイル」
Tシャツを販売するのは、大阪の「T-SHIRTS TRINITY(Tシャツトリニティ)」。同社に登録するデザイナーから寄せられたイラストを選抜し、Tシャツに印刷してインターネット上で販売している。独特の「おもしろTシャツ」で、世の中で話題のトピックをイラスト化したものも多い。同社に電話取材すると、麻生副総理は2013年2月中旬にロシアのモスクワで開かれた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に向かう際、空港で独自ファッションを披露したが、その数日後に「麻生Tシャツ」を発売したという。
「3月初めから中旬にかけて、売れ行きは好調でした」
その後いったんは落ち着いたが、最近1週間でまた受注が増えてきたそうだ。4月18、19日に米ワシントンでG20が行われ、渡米する麻生副総理の服装がニュースで報じられたことが影響したのかもしれない。最初は1種類だったTシャツも今では5種類ほどがそろい、モノクロや「全身ゴールド」のイラスト、さらに日の丸をバックにソフト帽姿で左手の人差し指をぐっと突き出す絵柄も登場した。
Tシャツトリニティは取材に対し、時事ニュースを基にしたイラストのTシャツのなかでは「群を抜いて売れています」と話す。デザインを気に入ったとの声が多いそうだ。購買層は20代後半から40代が主力だが、50、60代の客から「電話で購入の問い合わせを受けるようになりました」。東京や、麻生副総理の出身地の福岡からの注文が目立っているという。
「ダンディズムの衣装哲学のルールとは逆」
ネット上で「麻生Tシャツ」の評判は上々だ。ツイッターには、「それはどこで買えるんだ?」「意外とカッコ良かった」と好意的な書き込みが多い。なかには「ゴッドファーザーのテーマが聴こえるようだ」との感想もある。
麻生副総理のファッションは、メディアでたびたび取り上げられてきたが、ネットの反応とは異なり少々厳しい。2013年3月1日の朝日新聞電子版では、モスクワG20でのいでたちを「気合はたっぷりなのに『意図不明』だった」とバッサリ。政治家の中では麻生副総理のファッションセンスは「トップクラス」と評価する半面、ダンディズムの衣装哲学で最も大切な「決して目立たないこと」とのルールとは逆に目立つことに重点を置いている、と指摘した。3月14日号の「週刊文春」は、ソフト帽をかぶっているのは「後頭部が薄くなってきたため」との知人の証言を紹介し、麻生副総理の娘が「マフィアみたいだから絶対にやめて」とメールを送ったとも暴露している。
ただ、Tシャツのデザインに取り上げられたうえ売れ行き好調となれば、マスコミも「マフィア」とやゆしてばかりもいられなさそうだ。4月25日付の産経新聞電子版は、「麻生ファッション」が話題になり、かっこいいと感じる若者も多いと紹介。刺激を受けておしゃれに目覚める「おじさん世代」が増えるのは大歓迎、と前向きにとらえている。