米新聞大手のニューヨーク・タイムズは、2013年4月25日(現地時間)、1~3月期の決算を発表した。有料電子版の好調が広告収入(印刷版およびデジタル)の不振を補うかたちで 、営業益(減価償却などを除く)は前年同期から3.4%上昇し4960万ドルになった。 売上高は2%減の4億6590万ドルだった。
広告は印刷版、デジタルともにマイナス成長(全体で11.2%の低下)を記録した。エンターテインメント(映画など)業界や金融機関などの不振が広告減につながった(同社デジタル担当副社長デニーズ・ウォレン)。だが、4月に入り「あらゆる分野で復調の兆しが出てきている」(同氏)という。
ニューヨーク・タイムズ復活の鍵は電子版に課金制度を導入したこと。3月末に満2年を迎えた有料電子版の購読者数は67万6千人になり、1年前から45%も増えたことになる。それでも購読料収入(印刷版および電子版)が6.5%しか増えなかったことを根拠にして、同社の復活に懐疑的な意見は多い。
サービスを限定した低価格の電子版購読導入
2012年11月にCEO(最高経営責任者)に就任した元BBC会長のマーク・トンプソンは、同日の決算発表会で今後の経営方針の柱になる「新成長戦略」を発表した。デジタル化の推進がその最終目標だが、具体的には以下の4つがその重点になる。
1)電子版の料金体系の確立(サービスを限定した低価格の購読サービスの導入)
2)海外での購読者(今秋から姉妹紙「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」を「インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ』に改名し、「グローバル市民」という世界のエリート層への浸透を計る)
3)動画への進出(ドキュメンタリーなどのビデオフィーチャー)
4)ブランドのマネタイズ(「ニューヨーク・タイムズ」のブランドを活用して商品やサービスの提供)
同社が実施した市場調査によれば、低価格の有料サービスに関心の高い消費者は多く、「数十万人」の有料会員が発掘できそうだという(トンプソンCEO)。
(石川幸憲 在米ジャーナリスト)