体操男子の五輪金メダリスト塚原直也選手(35)が国籍を変更したことが分かり、オーストラリアから五輪に出るのかと注目を集めている。
塚原直也選手は、日本が長い低迷を脱し、2004年のアテネ五輪で団体総合金に輝いたときのメンバーだ。このときは、「栄光への架け橋」のアナウンスとともに鉄棒の冨田洋之選手が着地を決めて、日本中を沸かせた。
ロンドン五輪には間に合わなかったが…
その後、塚原選手は五輪出場を果たせなかったが、体操選手としての現役生活は続けている。そして、塚原選手は2013年4月21日、オーストラリア国籍を取得し、今後はオーストラリア代表として国際大会に出場することを明らかにした。
国籍を変更して五輪を目指したケースとしては、カンボジア国籍を取得したお笑いタレントの猫ひろしさん(35)がいる。このときは結局、ロンドン五輪でのマラソン出場はならず、カンボジア国内では異論が出た。塚原選手が今後、16年のリオデジャネイロ五輪を目指すのか報道だけでは不明だが、ネット上では、挑戦に理解を示す声のほか、国籍変更してまでなぜなのか、といった疑問も出ている。
報道やインタビューによると、塚原選手は、アテネの後、08年の北京五輪も目指したが、代表に選ばれなかった。その後、五輪で金メダル5つを獲得し「月面宙返り」の技で知られる父親の光男さん(65)から、日体大時代の後輩が豪州ブリスベンで国籍を変えて体操を続けているという話を聞き、自らも思い立った。環境を変えて、さらなる成長をしたいと、09年にオーストラリアに体操留学し、ブリスベンを練習の拠点にしたのだ。
さらに、永住権も取得し、オーストラリア代表として12年のロンドン五輪出場を目指した。しかし、国籍を取得するには滞在日数が足りず、結局五輪には間に合わなかった。
豪州では、塚原選手はトップクラス
オーストラリアは、体操競技の選手層が薄く、国際大会でも上位に入るまでになっていない。そんな中で、塚原直也選手は、代表選考会で優勝するなどしており、すでに強化選手にも選ばれている。
父親の光男さんや、体操の日本代表にもなった母親の千恵子さんは最初、塚原選手が国籍を変えることに驚いたが、現在はオーストラリアで体操を続けることに賛成しているそうだ。
塚原選手は、日豪両国で後進の育成も手がけ、将来はコーチになりたいと明かしているが、オーストラリアで今後、自ら五輪も目指すのだろうか。猫ひろしさんのケースとはどう違い、オーストラリア国内では異論などは出ていないのか。
光男さんが校長をしている所属の塚原体操センターでは、取材に対し、塚原選手はオーストラリアから帰国したばかりで、日本国内でこれから試合が立て続けにあるために対応は難しく、別の機会にしてほしいとのことだった。
(2013年5月1日追記)
塚原体操センターではその後、取材への回答を寄せた。そこでは、塚原直也選手がオーストラリアからも選手として次の五輪を目指すことを明らかにした。代表となることで、オーストラリアが五輪に出場できるよう貢献したいとしており、将来は国際的指導者になりたいとも言っている。また、日本体操協会とオーストラリア体操協会は、塚原選手がオーストラリア代表として活動することに文書で合意していることも明らかにした。オーストラリアオリンピック委員会からは活動を歓迎するとの文書も受け取っており、国際交流の観点から「良好な関係」だと強調している。