通年採用企業も増える
そもそも、経団連の倫理憲章は法的拘束力はない紳士協定。ルールを破っても罰則はない。そのため「今回の繰り下げにどれだけの実効性があるのか」と疑問視する意見も少なくない。
グローバル化が進んだ今日、日本の制度に縛られない外資系や、横並び意識を嫌う国内の新興企業も増え、通年採用は珍しくなくなっている。そうした企業が伝統的な経済界のルールに付き合う必要はなく、優秀な学生を早く囲い込むことも可能なだけに、経団連系企業には「ルールは形骸化し、公正な競争にならない」と、"青田買い"への懸念は強い。
もちろん、学生と大学側の受け止めは勉強に集中できると好意的で、特に海外留学した日本人学生にとっては朗報だ。留学生の帰国時期は春以降になることが多く、企業が学生に内々定を出し終えた時期から就活を始めるため、希望職種から内定を得る可能性が低いとの指摘があったからだ。
しかし、従来なら内定を獲得できない学生は12月ごろに就活を終了させていたが、「後ろ倒しの影響で結局は年明け後まで就活が長期化するかもしれない」(アナリスト)との指摘もある。
いずれにせよ、日本企業の新卒一括採用そのものが、時代に合わなくなってきているのは事実。特に近年、就活が緻密になり過ぎ、学生の物理的な負担が増し過ぎている問題もある。新卒にこだわる、今の採用システムを見直す時期に差し掛かっているのは間違いない。