日本介助犬協会(横浜市)の「介助犬総合訓練センター・シンシアの丘」は愛知県長久手市にある。鉄骨2階建て約1600平方メートル。25頭から30頭分の犬舎と、訓練室5室、ドックランなどを備えている。日本初の訓練施設として開所したのが2009年5月で、満4年を迎える。2013年4月14日、高柳友子・協会事務局長の案内で見学した。
手足が不自由になった人の日常生活を助ける
2002年にできた身体障害者補助犬法により、盲導犬、聴導犬とともに介助犬が正式に補助犬と位置づけられた。介助犬は、脊髄損傷、脳卒中、多発性硬化症、重症筋無力症などで手足が不自由になった人の日常生活を助ける犬。ずっと側にいて、落とし物を拾ったり、指示したものを持ってくる、ドアや冷蔵庫の開閉、歩行介助や車イスを引っ張る、靴や靴下を脱がすなどの仕事をする。
介助犬は飼い主との信頼関係の構築が重要だ。食事やトイレなどのケアもできるだけ、飼い主自身が行うのが望ましい。そのために専門の訓練士が指導し、候補犬は飼い主と一緒に2週間ほどセンターで、その後、生活の場である飼い主宅で1か月ほど一緒に訓練を受ける。通常は2歳半から3歳で介助犬になり、10歳でリタイアする。1頭の養成に250万円から500万円もかかるが、同センターの運営費も含め、訓練費用はすべて企業や一般からの寄付金でまかなわれている。
身体障害者補助犬法は、障害者が補助犬を伴って公共施設や交通機関、飲食店などの施設を利用できるし、一定以上の企業は補助犬同伴での勤務を拒否できない、などを定めている。「介助犬を必要としている人は15000人ほどといわれているが、実際に活動しているのは70頭程度。介助犬のことをもっと広く知ってもらい、必要な方々に届けたい」と、高柳さんは話していた。
(医療ジャーナリスト 田辺功)