2013年3月、中国・上海の川に「豚の死骸」が大量に流れているのが見つかったという報道が世界中に衝撃を与えた。3月末には中国での鳥インフルエンザの人への感染が見つかり、感染者・死者が日に日に増えている。
中国の衛生状態に不安が広がる中で、改めて気になるのが中国産食品の安全性だ。週刊文春が「列島震撼『中国猛毒食品』告発キャンペーン」と題した特集を3月28日号から連載しているほか、AERAの4月22日号でも「中国産品正しく怖がる」という記事で中国産食品がはらむ危険性を解説している。日本は加工食品や冷凍食品の原料、外食産業などで中国にかなり依存しており、不安が拭えない。
中国で「生卵は絶対食べてはならない」注意喚起
中国での豚の死骸の漂流が初めて報道されたのは、13年3月9日だ。上海市の黄浦江で、約1万体の死骸が漂流していたという。この川は生活用水の水源で、上海近郊では食糧生産が盛んに行われているということもあり、食品を作る際に豚が漂流していた水が使われている可能性もある。
香港の英字新聞「サウスチャイナ・モーニングポスト」などは、病死した豚を違法に転売する業者が12年に一斉摘発されたため、死んだ豚の行き場がなくなり不法投棄されるようになったと報じている。摘発までは転売された病死豚が加工食品に使われていたそうだ。
漂流していた豚からは「豚サーコウイルス」が検出された。中国の衛生当局は人体に感染するウイルスではなく、水質への影響もないとしているが、多くの死骸が長時間川に浮かんでいたとなると、衛生面でかなり心配が残る。
さらに3月31日、「H7N9型」の鳥インフルエンザに感染した上海の男性2人が死亡したと衛生当局が発表した。H7N9型の人への感染例が報告されたのは世界初だ。
H7N9型のウイルスが検出されたニワトリやハト、ウズラを食べた人が感染しており、中国の健康情報サイトでは「生卵、半熟卵は絶対食べてはならない」と注意喚起されている。
中国での鳥インフルエンザの死者は、4月17日までに17人に増えている。
中国産冷凍野菜は37万トン、冷凍食品は14万トン輸入
日本では07年から08年にかけて、中国から輸入した冷凍餃子に有機リン系殺虫剤が混入し、食べた人が下痢やおう吐などの症状を訴えたという「毒ギョーザ事件」が大きな問題となったほか、冷凍野菜から高濃度の化学物質がたびたび検出されている。
厚生労働省が発表している「食品衛生法に違反する食品の回収情報」を見ると、08年2月から13年3月まで、中国産の冷凍食品や野菜、海産物について基準値を超える生菌数、有害物質の混入などが13件報告されており、韓国の9件、タイの7件を抑えてトップだ。なお、日本産の食品でもたびたび食品衛生法違反が報告されているが、賞味期限の誤記載やアレルギー物質の表示漏れ、プラスチックや金属など異物混入といった、ややレベルの異なる事例が多い。
社団法人日本冷凍食品協会の発表では、11年に中国から輸入した冷凍野菜は、ポテトやいんげん、ほうれん草など計約37万トンで、米国を抑えてトップだ。調理冷凍食品も、鶏肉が使われているフライドチキンや唐揚げをはじめ、ぎょうざ、とんかつなど約14万トンを輸入しており、こちらも2位のタイ(約7万6000トン)を大幅に上回っている。毒ギョーザ事件後の08年、09年には2年連続で前年より輸入量が減少したが、10年、11年には、野菜、調理済み食品ともに続けて輸入が増えている。
不安が募る中、中国産食品はどんどん日本国内に入ってきているという現状で、消費者はどういった点に注意すればよいのだろうか。30年以上「食の安全」の問題に取り組み続けている弁護士の神山美智子氏に話を聞いた。
「毎日ファストフードを食べる、外食に頼るということは、栄養の面から見てもやめるべき。気を付けるとしたら、家で普通にご飯を炊いて、産地などの表示をよく見て野菜を買って、自分で調理する、くらいしかできないのでは。外食産業はそうした表示がないし、あまりに安い食品というのも安さには理由がある。全く食べないというのは難しいだろうから、自分で気を付けてなるべく控えるしかない」