米ボストン爆破テロ事件を起こした容疑者兄弟は、なぜこのような凶行に走ったのか。注目を集めているのは、インターネット上で発見された2人のアカウントだ。
特に警官との銃撃戦で死亡した兄タメルラン・ツァルナエフ容疑者(26)のものと見られるYouTubeページには、イスラム過激派への傾倒をうかがわせる動画の閲覧履歴が複数残っていた。
「ハリー・ポッターは邪教だ!」
イスラム過激派動画を「お気に入り」
黒ひげの男が荒々しく叫ぶ。そんな動画がタメルラン容疑者らしき人物のYouTubeアカウントに、「高く評価した動画」として登録されていた。オーストラリアの「伝道者」による演説を収めたもので、イスラムの中でも過激派の主張だ。
タメルラン容疑者が動画をアップロードしていた痕跡はないが、その代わりに他のユーザーが投稿した複数の動画を自らのページ上で、広く紹介していた。その多くは、アジテーションじみた激しい口調の説法で、リストの中には「テロリストたち」と名付けられたものまで存在している。一部には、アルカイダが信奉する予言と共通する内容のものも含まれていると、米ワシントン・ポストは指摘する。
ツァルナエフ一家はチェチェン人で、2002年以降に紛争が続く旧ソ連圏から米国に渡ってきたとされる。タメルラン容疑者も当初は米国になじもうと努力し、大学でボクシングに打ち込み、米国代表として五輪に出場する夢を持っていた。しかしケガもあって断念を余儀なくされ、市民権も得られず、その前後からイスラムに傾倒していったという。11年にはロシアからの照会で、テロ活動との関与を疑われFBIの聴取も受けた。
YouTubeの「お気に入り」の記録からは、夢破れ米国社会で行き場を失ったタメルラン容疑者が、国外の過激派たちの活動に心を引かれていった様子がうかがえる。
弟はツイッターで事件後「皆さんお気をつけて」
2013年4月19日逮捕された弟のジョハル容疑者(19)は兄と比べ優等生タイプで、米国社会になじんでいたと伝えられる。ツイッターのつぶやきも、兄ほどに過激思想とのつながりを感じさせるものではない。
一方で事件直前の9日には、別のSNSに内戦中が続くシリアのイスラム教徒を支援するよう呼びかける動画を貼り付けるなど、兄に引きずられる形で思想を先鋭化させていたようだ。
15日の事件から約数時間後にはツイッターで、以下のような意味深なツイートを行っている。
「この町の心には愛がない。皆さんお気をつけて」
その後もFBIが容疑者写真を投稿する直前の17日までつぶやきを続け、あろうことか自らが起こした事件がらみのツイートに、「それデマだぜ」とからかうような投稿までしていた。最後のつぶやきは、「僕はストレスを感じない種類の男だ」なるものだったが、これは捜査網が狭まる中での虚勢だったのかもしれない。