200万枚以上の売り上げを記録したSMAPの大ヒット曲「世界に一つだけの花」が、2003年3月5日に発売されてから10年が経った。いまだに人気は衰えず、カラオケなどで親しまれているほか、音楽の教科書にも採用されている。
これだけの人気とあって、歌詞の内容について度々批評されてきた。発売10年を機に、再び議論が巻き起こりそうだ。
「聖域なき構造改革に違和感持つ人々の胸に落ちた」
13年4月9日付の西日本新聞に、福岡市の小学校の卒業式で校長が「一番伝えたいこと」として、「みんなは世界に一人しかいない特別な存在。オンリーワンを目指し、胸を張って生きていってほしい」と、「世界に一つだけの花」の内容を意識した式辞を卒業生に送ったという記事が掲載された。
東京新聞でも、13年4月3日付の朝刊で「『世界に一つ…』10年 個性尊重の光と影 競争背景 寛容さ共感」という記事を掲載した。
「世界に一つだけの花」が愛された理由について、音楽評論家・湯川れい子氏の「戦後の競争社会の中で、自分の存在意義を見つけられないで苦しむ人々がたくさん出た。年間に三万人もが自殺するような社会の圧迫感の中で、『オンリーワン』を大切にしたいという思いがあった」、教育評論家・尾木直樹氏の「(小泉政権の)聖域なき構造改革がもたらしたのは、弱者を切り捨てる成果主義。競争社会が加速した時代だったからこそ、違和感を持つ人々の胸にすとんと落ちた」、弁護士・伊藤真氏の「自分の憲法の講義では、最も大切な一三条の『個人の尊重』から始めている。そのときにこの歌を例示している」というコメントを紹介している。
一方で評論家の岸本裕紀子氏は、「若者の向上心のなさや現実逃避と結び付け、批判的な解釈が生まれることになった」とマイナス面を指摘している。