「最後通牒」でも対話の窓口開く
ただ、内容を詳しく見ていくと、少なくとも3つの明らかな矛盾点が指摘されており、北朝鮮側の真意は読み解きにくい。ひとつが、上述の「予告のない報復行動が開始されるであろう」という点。「予告のない報復行動」が、文章にすることで事実上予告されている点だ。
二つ目が、具体的な北朝鮮側のアクションについてだ。
「われわれの千万の軍民が最高の尊厳をどのように仰いで守るのかを見せるための朝鮮革命武力の正々堂々たる軍事的示威行動が即時に開始されるであろう」
とあるが、「即時に」であれば、すでに北朝鮮側の行動が始まっているはずだ。文面では「即時に」に対応する前提条件は示されていない。
三つ目が、「最後通牒」の位置づけだ。最後通牒とは、
「紛争の平和的処理のための交渉を打ち切り、自国の最終的要求を相手国に提出して、それが受諾されなければ戦争等に訴える旨を述べた外交文書」(広辞苑第6版)
を指し、交渉の余地が事実上なくなったことが前提だ。ところが、今回の声明では、
「かいらい当局者が心から対話と交渉を願うなら、今まで働いた大小のすべての反共和国敵対行為に対して謝罪し、全面中止するという実践的意志を全同胞に示すべきであろう」
と、対話の窓口は開かれたままだ。
それ以前に、最後通牒とは「外交文書」で、相手側に手交されるのが一般的だ。ところが、韓国側は「公式には最後通牒は受け取っていない」と主張しており、その根拠として、北朝鮮側が一方的にホットラインを遮断したことを挙げている。そもそも、最後通牒の体をなしていないとの指摘も出そうだ。
AP通信などによると、4月16日の平壌市内は平穏そのもので、こういった状況も、「最後通牒」の信ぴょう性をさらに疑わしくさせる原因になっている。