阪神の藤浪晋太郎はやはり「甲子園の申し子」だった。2013年4月14日、地元甲子園での初登板でプロ初勝利。同じ日、日本ハムの「二刀流」大谷翔平は一軍登録を抹消された。東西の黄金ルーキーが明暗を分けた1日となった。
6回5安打無失点の投球にスクイズも成功
藤浪のピッチングは見事だった。DeNA相手に先発で6イニングを投げ、5安打されたものの無失点。阪神を勝利に導いた。
「ストレートはそれほど走っていなかったけれども、悪いなりに抑えることができました」
そう総括した19歳の新人に4万5000人を越えるファンは大きな拍手を送った。和田豊監督も満足のコメントを出した。
「キャンプから課題をしっかりとこなしている。走者を出してもどんどん勝負した。頼もしい限りだ」
藤浪は投手にはやっかいなスクイズも決めた。高校時代にたたき込まれた「甲子園野球」の成果だろう。このプレーでも虎ファンを喜ばせた。
一方この日、日本ハムの大谷がベンチから消えた。「出場選手登録」から抹消された。13日のオリックス戦で右翼を守り、ファウルフライを追った際に右足首を捻挫したのである。
藤浪と大谷は今シーズンの高卒大物ルーキーとしてのライバル。「東の大谷」「西の藤浪」といった構図で、プロ野球にとっては理想の形といえる。その二人が同じ日に明暗を分けることになったのだから皮肉だ。
入団後の注目は大谷に集中したが……
二人のキャッチフレーズは、藤浪が「甲子園の申し子」なら大谷は「二刀流」。藤浪は周知の通り、昨年の甲子園大会で大阪桐蔭のエースとして春の選抜、夏の選手権を連覇。その圧巻のピッチングは記憶に新しい。花巻東の大谷は投げるだけでなく打力も優れ、投打とも専門家の評価は良かった。
高校時代は圧倒的に藤浪の方が注目度は高かった。ところがドラフト会議後は大谷にメディアが集中した。大リーグ希望から日本ハム入りへの変更。投手と打者の二刀流挑戦。そして開幕戦での先発出場と初安打。投手一本の藤浪より話題は豊富で、当然ながらマスコミの露出は増えた。
しかし、ここへきて藤浪が実力を見せつけた。大谷は試合に出たり出なかったりのうえ、投手としての出番は二軍戦まで、と中途半端な印象をぬぐえない。
こんな情報がある。大谷は疲労が蓄積しており、捻挫もその影響ではないか、と。普通なら「足をひねるようなプレーではない」という。つまり故障を理由に休ませたわけである。確かに、キャンプ以来、目一杯の練習をしてきた。心身ともに相当まいっていることは予測できる。
藤浪はローテーション投手として登板してくる。一方の大谷は一層難しくなる。ともに次代を背負う素材。育て方、使い方をファンは注視している。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)