日本人が面白半分に吸引して事件に巻き込まれたら大変
ただこの米国人女性も、もろ手を挙げて「大麻賛成」を唱えているわけではない。「ワシントン州在住者は、大麻に関する学習が必要。特に子どもには、健康や社会への影響を家庭や学校で教えるべきでしょう。運転前には絶対に吸ってはいけないし、企業は社員の出勤前の使用禁止を就業規則に盛り込んでほしい」と主張する。年齢制限の徹底も必須だという。売買や栽培を含め、州議会がきめ細かな法整備を早く実現してほしいと求めた。
米国では、大麻の入手は比較的簡単だ。前出のシアトル郊外在住の日本人女性は、「学生時代、パーティーでどこからともなく大麻が回ってきた。売っている人も見かけた」と話す。在シアトルの米国人女性も「私が知る限り、米西部では大麻はすぐ手に入ります。違法ですが、使っている人は多い」と指摘した。それでも取り締まりが日本ほど厳しくないのは、より重大な犯罪の捜査に警察の人員が割かれているためとの意見もある。大麻の不正使用が横行するぐらいなら、きちんと法制化して規制の範囲内で使わせ、税収の確保にも役立てた方がよいとの考え方が、今回の合法化につながったのかもしれない。
「大麻ビジネス」「大麻観光」の促進でも、地元の人の意見は分かれた。米国人女性は大麻を酒に置き換えて、「シアトルではおいしい地ビールが多いですが、だからといって州を挙げて『シアトルに来て酔っ払おう』という観光キャンペーンを打つのはどうでしょうか」と説明。「ぜひシアトルで大麻を」と大々的に宣伝するのは賛成しかねるようだ。在シアトルの日本人女性は「公共の場でも大麻を吸っていい、と勘違いされると迷惑」と言う。特にシアトルに観光や留学で訪れた日本人が、思い違いしたまま面白半分に大麻を吸引し、健康被害や事故、事件に巻き込まれないでほしいと訴えた。
一方で、財政難に苦しむワシントン州が税収や観光収入アップの起爆剤になるのではと大麻合法化に期待をかけている面もある。シアトル郊外に住む夫婦は「地元の景気が浮揚して雇用が増えるのはよいこと」(米国人の夫)、「州の厳しい予算の問題を解決する手段にはなりえると思う」(日本人の妻)と話す。
2012年12月の住民投票で、ワシントン州では合法化賛成が55%、反対45%と僅差の通過だった。それだけ意見が割れているということだ。大麻がコカインのような「ハードドラッグ」の入り口になるととらえ、心身への影響を心配する意見は根強い。米連邦法ではいまだに大麻の販売や所持を禁じている。米CNNでは「米政府がワシントン州の法律の無効を求めて提訴する可能性もある」と指摘している。