西武とサーベラス、泥沼対立が深刻に 秩父線やライオンズは生き残れるのか

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   西武ホールディングス(HD)と筆頭株主である米投資会社サーベラス・グループとの対立が、泥沼化の様相を強めている。

   西武HD株の32.4%(議決権ベース)を保有して筆頭株主のサーベラスは、株式公開買い付け(TOB)を表明。目指す西武HD株の保有上限を当初は36.44%としていたが、目標を44.67%に引き上げると4月5日に発表したのだ。過半数近くまで保有して経営の主導権を握る意向を示したことになる。西武HD側は強く反発しており、6月の西武HDの株主総会に向け、議決権の委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展する可能性が指摘されている。

サーベラス側は取締役の半分確保を目論む

   サーベラスはTOBを進めると同時に、西武HDの取締役候補として、元金融庁長官の五味広文氏や元米副大統領のダン・クエール氏ら計8人の選任を求める株主提案を行った。現在の取締役も含め、サーベラス側で取締役定員(18人)の半分を確保しようとの目論見だ。

   これに対し西武HDは、古森重隆富士フイルムホールディングス会長らをメンバーとする有識者会議を設置。同委の意見も踏まえて、サーベラスによるTOBに対しては「早期の再上場を阻害する」などとして反対を表明。サーベラスが提案した取締役の選任提案にも反対の意向を示した。

   そもそも西武グループはかつて有価証券報告書の虚偽記載問題で上場廃止になり、経営危機に陥った際、サーベラスが出資して経営を支援した経緯がある。以来、両社は良好な協力関係を築いて再建に取り組んできた。その関係に対立色が強まったのは、西武HDの株式再上場が視野に入ってきた昨春ごろからだ。

不採算部門の廃止提案に住民やファンが反発

   両社の直接の対立点は、今後の経営の大きな方向にかかわる。サーベラスの狙いは、再上場時の売り出し価格を最大限に引き上げることというのが大方の見方。そのため、サーベラスは、西武HD側に不採算路線の廃止や西武ライオンズの売却などを含む採算性向上策を提案したとされる。西武HDが「地域住民の足を奪うようなことは長期的に経営を害する」などと反対すると、サーベラス側は西武HDの後藤高志社長らの退陣を要求し、昨秋ごろから両社の対立は決定的となった。

   サーベラス側は4月5日の記者会見で、路線の廃止や球団売却について「検討項目の一つとして挙げたもので、提案したことはない」(サーベラス・ジャパンの鈴木喜輝社長)と釈明。むしろ、西武HD側が、サーベラスの示した検討項目を公表したことに「いたずらに沿線住民やファンを不安に陥れた」(同)と批判した。

   不採算路線の廃止などには顧客らは強く反発、西武HDは沿線自治体から「路線の廃止やライオンズ売却はしないでほしい」との要望が連日のように寄せられていることに意を強くしている。

「ハゲタカに立ち向かう西武」の構図だが・・・

   株主総会に向け、両社はどう動くのか。サーベラスに次ぐ第2位の株主(15%弱を保有)のNWコーポレーションは、同社の大株主で元グループ総帥の堤義明氏がTOBに応じない意向を表明しており、TOBの行方は、上場廃止でも保有し続ける個人株主(保有比率計13%程度)の動向が焦点になる。

   確かに、世論の風向きは「ハゲタカに立ち向かう西武」という分かりやすい構図になっているが、「それぐらいでへこたれるサーベラスではない」(金融筋)。「サーベラスがTOBを仕掛けたのも、株主の動向を見極めるためで、プロキシファイトの準備の一環ではないか」(市場関係者)との見方は少なくない。

   今回のTOBの締め切りは5月17日で、3月末時点の株主が議決権を持つ6月の西武HD定時株主総会には間に合わないので、委任状争奪戦になった場合の株主動向は「世論とは別もの」(市場関係者)。高株価を訴えるサーベラスのささやきになびく株主が出てきても不思議ではない。

   西武HD側が6月総会を乗り切ったとしても、サーベラスは大株主として臨時総会の開催を求めることも可能。総会への出席率が80%ていどなら、40%超の保有率でも総会の過半数を押さえることができる計算で、「TOBで過半数目前まで株を集められれば、西武HD経営陣には大きなプレッシャーになる」(市場関係者)。

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