日銀は2013年4月4日の金融政策決定会合で、「これまでとは量的にも質的にも全く次元の違う」(黒田東彦総裁)新たな金融緩和策を決定した。日銀による資金供給残高(マネタリーベース)を2年で倍増するなど、大胆な政策をパッケージで示した。
事前の金融市場では「黒田新総裁の就任から間がなく、一度にすべて決められないのではないか」との見方も出るなか、「満額回答でサプライズ」(国内証券)の結果となり、円安・株高・債券高(金利低下)が急速に進んだ。背景には安倍晋三首相のバックアップを受けた黒田総裁のリーダーシップと偶然の演出があった。
「市場に分かりやすく伝わる方法を考えよ」
「現時点でとれる手段はすべて講じた。これまでのように(政策を)小出しにしていては(2年を念頭に2%の物価上昇率の)目標達成はできない」
4日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁はこう強調した。用意したパネルを使って説明する表情は自信に満ちあふれ、常に笑みを浮かべる余裕もあった。冷静に淡々と記者の質問に応じていた白川方明前総裁とはあらゆる点で対照的だ。
黒田総裁が白川氏の後任として就任したのは3月20日。初の金融政策決定会合まで2週間足らずだ。この間に日銀内をまとめあげられたのはなぜなのか。黒田総裁は就任後も国会での質疑などに追われており、日銀内でも「新総裁と打ち合わせする時間がとれない」との焦り、嘆きの声が聞かれていた。
ロケットスタートできた理由として、日銀内からは「黒田総裁のリーダーシップ」を挙げる声が多い。かつては日銀の政策を公然と批判していた黒田氏だが、専門は国際金融で、必ずしも中央銀行の金融政策の細部まで熟知しているわけではない。黒田氏が日銀幹部に指示したのは「市場に分かりやすく伝わる方法を考えよ」「従来のように戦力(緩和策)の逐次投入はしない」など、いくつかの大枠の方針に限られ、政策の細部の設計は日銀執行部に任せたようだ。