陸上自衛隊が弾の入っていない銃をイベントで市民に触らせたのは、銃刀法違反だとして、市民団体が陸自幹部らを刑事告発した。専門家は、触らせたのが事実なら違反になるとしながらも、告発まですることには疑問を示している。
刑事告発したのは、東京都内の市民団体「自衛隊をウォッチする市民の会」で、事務局長の種田和敏弁護士らが2013年4月10日に記者会見して明らかにした。
板倉宏氏「触らせたのなら一応違反になります」
陸自の練馬駐屯地では、12年4月8日に祭り行事を行い、装備品展示コーナーで、小銃と機関銃をそれぞれ2つ披露した。訪れた市民はそれらを手に取ったり、標的を狙って構えたりしており、市民の会では、それが銃刀法違反(所持)に当たると主張した。そして、田中直紀元防衛相や陸自幕僚長らを東京地検に刑事告発した。
報道によると、種田弁護士は、子どもが銃に触れているのも問題で、取り扱いをもっと厳格にすべきだと言っている。ただ、銃に触れた市民については、違法性の認識はなかったとして、告発することは見送った。
とはいえ、展示物を触らせただけで、違法性があると言えるのか。
この点について、板倉宏日大名誉教授(刑法)は、こう指摘する。
「たとえ弾が入っていなくても、銃を持たせたとなると、銃刀法違反には一応なりますね。もしモデルガンだったらそうはなりませんが、本物ということなら、問題と言えば問題でしょう」
銃刀法の第4条10項には、博物館などの施設で銃などを展示物として公衆の観覧に供することはできる、とうたってある。しかし、板倉氏は、市民が銃を見るだけでなく、触ってもおり、この条項から逸脱しているとみている。
銃を触らせたケースとしては、09年にびわ湖放送(大津市)の番組で猟友会会員が猟銃をタレントに持たせて、プロデューサーらとともに銃刀法違反(携帯)の疑いで書類送検されたことがある。
陸自「銃刀法違反かどうかも含めて確認中」
報道によると、このときは、猟銃に弾が入っておらず、実質的な危険性はなかったとして、プロデューサーらは起訴猶予処分になった。猟銃を触ったタレントについては、所持したとは言えないとして、送検も見送られている。
今回のケースについて、板倉宏氏は、びわ湖放送への処分と同じ扱いになるとみている。つまり、陸自幹部らは、同様に起訴猶予になるというわけだ。
ただ、そこまですることについては、疑問を示した。
「検察は事実を知った以上、捜査するのは仕方がないですが、今回は、銃の展示とそんなに違いがあるとも言えないでしょう。ですから、大げさに違法性を問うことがいいかは、話が別ですね」
陸上自衛隊の広報室では、取材に対し、「銃刀法違反になるかどうかも含めて、今確認しているところです」とだけ答えた。
陸自の練馬駐屯地では、2013年4月14日も同様なイベントを予定しており、装備品展示コーナーで同じ銃の取り扱いをするとしている。しかし、今後の確認次第では、問い扱いを変更する可能性もありそうだ。
ネット上では、「一般人に銃を触れさせるとかねぇよ」という向きも一部であるものの、それだけで銃刀法違反に問うことに疑問の声が多い。「で 誰がどんな被害を受けたのかね」「こんなのは常識の範囲内だと思う」といった指摘が相次いでいる。