イタリアの高級車メーカー「マセラティ」が6代目となる旗艦モデル「マセラティクワトロポルテGTS」を2013年6月から日本で発売すると発表した。
1963年に初代クワトロポルテをリリースしたマセラティは「スーパーカー並みの高性能スポーツセダン」というジャンルを開拓。6代目の新型は3.8リッターのV8エンジンが、最高速度307キロ、0→100キロ加速4.7秒の高性能を誇るが、最近のマセラティの魅力はハイパフォーマンスにとどまらない。マセラティのエンジンサウンドはバイオリンの名器「ストラディヴァリウス」と共通点があるというのだ。
脳を活性化させるサウンド
工業製品の音質を研究する「サウンドデザインラボ合同会社」(静岡県磐田市)と中央大学理工学部音響システム研究室が「エンジン音と弦楽器の音には共通点が多い」との研究成果を昨夏まとめたことから、マセラティジャパンはマセラティのエンジンサウンドの魅力を解明するため、詳細な実験を両者に依頼した。
サウンドデザインラボと中大音響研究室はクワトロポルテとバイオリンを含む5種類の管弦楽器について評価。その結果、「マセラティの加速音とストラディヴァリウスの演奏音には、(1)迫力があり、創造力をかきたてる(2)脳を活性化させる効果がある(3)音響特性として明瞭な整数次倍音がある――という三つの共通点があることが科学的に明らかになった」という。
この研究成果を受け、マセラティジャパンは「快音を奏でるマセラティサウンドの魅力をさまざまな形でユーザーにお届けしたい」として、専用サイト「Sensory Driving Project」を開設。マセラティサウンドとストラディヴァリウスの音色を聴き比べることで、ハイパフォーマンスだけでないマセラティの繊細な魅力を伝えている。
ドライバーにも心地よい
これまでもクルマやバイクのエンジン音やエキゾーストノート(排気音)は様々な形で音楽にたとえられてきた。スバルの水平対向エンジンは、その独特の重低音とビートから「スバルサウンド」や「ボクサーサウンド」と呼ばれる。トヨタ自動車と富士重工業(スバル)が共同開発したスポーツカー「トヨタ86」と「スバルBRZ」は、このスバルサウンドをドライバーに心地よく聴かせる工夫をしているほどだ。
「サウンドクリエータ」と呼ばれるこの装置は、「アクセルに連動して吸気サウンドをコクピットに伝え、ゆったり走る時はマイルドに、アクセルを踏み込んだ時は躍動的に、気持ちよいサウンドを乗員に届ける」という。実際に86とBRZをドライブすると、金管楽器のような澄んだ吸排気音が足元から鼓動のように伝わってくるのがわかる。
マセラティジャパンは3月下旬にバイオリニストの千住真理子さんを東京都目黒区の正規ディーラーに招き、ミニコンサートを開くなど、マセラティサウンドを戦略的にアピールしている。同ジャパンのカッツォーリ社長がマセラティのエキゾーストノートについて熱弁。「バッハ無伴奏バイオリンのためのソナタ」などを披露した千住さんは「共鳴するという点で、マセラティとストラディヴァリウスはとても似ていると思います」と語り、詰め掛けたファンの喝采を浴びた。