長期金利の動きが荒れている。東京債券市場で国債の売買が交錯したためで、2013年4月5日午前には年0.315%まで下落(国債価格は上昇)して過去最低を更新したが、その日の午後には0.6%台まで上昇(価格は下落)。その後もじわりと上昇している。
きっかけは4日に日本銀行が「量的・質的金融緩和」を発表したことだが、一般に「金融を緩和すれば、金利は下がる」ものだが、そのようにならないのはなぜだろう――。
「1年分の値動きが、わずか1日で起こった」
日銀が「量的・質的金融緩和」を決めたことを受けた4月5日の東京債券市場は、朝から日本国債を買う動きが強まり、長期金利の代表的な指標となっている新発10年物国債(328回債)の利回りが前日に比べて0.140%低い年0.315%まで下落(国債価格は上昇)した。
ところが、その日の午後には0.6%台まで急上昇(価格は下落)し、動きの激しい展開となった。
BNPパリバ証券チーフ円債ストラテジストの伊藤篤氏は、「この値幅(0.3ポイント)は2012年の1年間で動いた値幅と同じです。つまり、1年間で動くものを、わずか1日で動かしてしまった。日銀の政策はそのくらい大きなサプライズだったわけです。当然、金利は低下しましたが、さすがに0.3%台の水準よりは下がらないだろうと判断した投資家が、午後に当面の利益を確定するため、まとまった売り注文を出したわけです」と話す。
日銀は新たな金融緩和策に基づいて、償還までの期間が5年を超える国債を1兆2000億円買い入れて、10日に資金を供給するとしていた。
日銀が1兆円を超える長期国債を1度に買い入れることは過去になかったことで、4月8日以降の東京債券市場は先週末に続いて、国債の売買が交錯して長期金利が乱高下する、荒れた展開になっている。
8日も一時は0.440%まで低下したが、その後に0.530%まで上昇し、結局0.525%で取引を終えた。9日には前日比0.03~0.045%上昇していた。
BNPパリバ証券の伊藤氏は「日銀による国債の買い入れがあまりに巨額なため、投資家はその影響がどの程度ものか判断できず、適切な価格水準を見定められなくなっています。この1~2か月くらいはこうした状況が続くのではないでしょうか」とみている。