神奈川県「特例企業税」敗訴で635億円返還 自治体の「独自課税」に最高裁が違法の判断

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   神奈川県が2001年に条例で独自に導入した「臨時特例企業税」について、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は条例が違法だとして、同県内に工場を置くいすゞ自動車が納税した約19億円全額の返還を命じた。自治体の独自課税が最高裁で違法・無効とされたのは初めて。

   この課税により、県には約1700社から約480億円の税収があり、「同様の訴訟が起きれば、勝訴の見込みはない」と判断。県の貯金ともいえる財政調整基金を取り崩し、納付済みの全額に利息分(還付加算金)を加えた計約635億円を返還する。

欠損金相当額に課税

   判決は2013年3月21日。「有効」とした二審・東京高裁判決を破棄し、県の全面敗訴が確定した。県は3末までに36社に約380億円を返還、残る約250億円については4月中に返還する方針。

   地方税法では、企業は利益が出ても過去の赤字分と相殺することが可能で、法人事業税がゼロになる企業も多かった。だが、神奈川の企業税は税収を安定させるため、単年度で利益が出れば、課税できる仕組み。具体的には県内に事業所があり資本金5億円以上で、当期利益を上げながら、過去の赤字を欠損金として繰り越すことで法人事業税を減免された企業を対象に、欠損金相当額に課税した。

   訴訟では、企業税を課した条例が、より上位のルールである地方税法を逸脱しているかが争点となり、2008年3月の一審・横浜地裁判決は「企業税は、地方税法の規定の目的や効果を阻害している」として条例を違法とし、いすゞの請求をすべて認めた。

   しかし、2010年2月の二審・東京高裁判決は「企業税は欠損金の繰り越し控除をする前の所得に課税するもので、法人事業税を補完する『別の税目』として併存しうる」として適法と判断して請求を退け、いすゞが上告していた。最高裁判決は「地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断することをその趣旨、目的とするもの」と断じた。

最高裁は「租税法定主義」に軍配

   企業税は、2000年の地方分権一括法の施行で自治体が法律の定めのない独自の税(法定外税)を創設しやすくなったことを受け、総務相の同意を得て導入された。その後、利益だけでなく企業規模などに応じて税を徴収できる「外形標準課税」が導入されたのに伴い、2009年3月に廃止されている。

   今回の訴訟は、地方自治に重きを置くか、課税は法律に基づかねばならないという「租税法定主義」を重視するかの争いだったが、最高裁は後者に軍配を上げたことになる。例えば大阪府泉佐野市が導入した、関西国際空港と市を結ぶ空港連絡橋利用税など、景気低迷による税収不足対策の法定外税への風当たりが厳しくなる可能性がある。

   税収不足対策なら、住民税率の引き上げなどは自治体の判断で可能だが、選挙を意識して実行は難しい実態がある。今回のような企業への課税は「取りやすいところから取るという安易な発想」(経済団体関係者)ともいえ、自治体は発想の転換を求められた形だ。

   法定外税は、2011年度決算ベースで、総額は316億円と地方の全税収の0.1%にも満たない。しかも3分の2は核燃料関連税で、実際にはほとんど機能していない。ただ、その中では企業税のような「法定外普通税」でなく、産業廃棄物などへの課税、環境保全を目的に観光客や別荘所有者などに負担を求めるなど、目的を明確にした「法定外目的税」が少なくない。「政策目的が明確な方が受け入れられやすく、今後の主流になっていくのではないか」(総務省筋)との見方も出ている。

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