東京五輪の経済効果、本当に3兆円? マスコミ大キャンペーンの舞台裏

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   2020年の東京五輪招致は、国際オリンピック委員会(IOC)の調査が行われ、都民の支持率も上昇するなど、関係者の表情は明るさを増しているように見える。その一つの要因とされるのが、マスコミも動員した経済効果キャンペーンだ。

   「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」と都スポーツ振興局がまとめた試算は、今年9月のIOC総会で東京開催が決まった場合、そこから大会を開催する2020年までの8年で、全国の需要増加額が1兆2239億円、経済波及効果は2兆9609億円と弾いた。果たして本当なのか。

ロンドンより短期間で1.5倍を見込む

   需要増加は東京都だけで9669億円。内訳は、大会で使う競技会場や選手村といった大会関係施設の建設費3557億円と、大会運営費2951億円、その他(大会関係者の消費支出、オリンピックグッズやテレビの購入など)3161億円。都以外の地域の需要増加額は2570億円。なお、大会がなくても整備する道路や鉄道などのインフラ整備費は算出対象から除外したとしている。

   施設関係の現時点の計画は、国立競技場を改築してメーン会場とし、ここを含め選手村(晴海地区)を中心に半径8キロ圏内に28の競技会場をコンパクトに配置。そのため施設は計35会場で、既存15のほか、新規11、仮設9を見込む。これらが需要増加分の大きな柱になる。

   こうした需要増加は、大会を開けば必ず出ていく直接的な支出。これに対し、経済的に重要なのが波及効果。つまり、需要増加に伴い、仕入先や関連企業に新たな仕事が生まれ、雇用が増え、給料が支払われるというように付加価値が創出され、それによって消費を誘発する効果だ。これは延々と連鎖して続くので、今回の試算では2順目(第2次間接波及効果)までを計算した。これが全国で2兆9609億円、うち、都1兆6753億円、都以外の地域1兆2856億円。雇用は都で8万3706人をはじめ全国で15万人を超す雇用誘発が期待できると推計している。

   ただ、試算を疑問視する声もある。昨年のロンドン五輪は、2000年から開催年の2012年までの12年間で、経済効果は2兆円とされる。これに対し、東京は8年間で3兆円と、期間は短いのに1.5倍の効果を見込んでおり、「無理をしているのではないか」(エコノミスト)と疑問がわくところ。

「逆経済効果」も予想しなければ

   特に、数字の内訳で、投資関係の少なさが東京の特徴であり弱点だ。ロンドンの効果では、約57%が大会のために建設された施設に由来し、他は閉会後に作業を行う建設業が24%、五輪に絡んだ観光業が12%、大会運営・開催費が6%(大手銀ロイズ・バンキング・グループによる調査報告書)。これに対し、東京は既存の施設を活用して、無駄なものをつくらないことをPRしている。チケットなどの収入や選手村の大会後の売却代金などを差し引いて、「五輪開催に伴う純粋な公費支出は1500億円」と、都が「無駄排除」を強調すればするほど、経済効果の方はお寒くなりかねないジレンマがある。

   試算は仮定に基づいたものとはいえ、「『五輪によって前倒しされる経済活動』も含まれている可能性があるし、『五輪関連の経費を他の事業に投入した方が、効果が大きい』場合性もあるだろう」(大手紙運動部記者)。例えば老朽化した国立競技場は、五輪のあるなしにかかわらず建て替えることが決まっており、この建て替えを五輪関連の需要増加に含めるのには異論も出るところだ。

   さらに、「五輪の開催で、本来あるはずなのが起こらない(減る)逆経済効果」もある。実際、ロンドン五輪では開会の最初の週、ホテル滞在客が通常の30%も落ち込み、8月月間の海外からの英国への旅行者も5%減ったと報じられた。ホテル代が「五輪料金」に跳ね上がったこと、また「常連客」が五輪による混乱を敬遠したためと推測されている。五輪で東京の経済が上向いても、地方では客足が鈍って経済的に損失が生まれることも考えられる。

   いずれにせよ、8年で3兆円の波及効果と言っても、ならせば年3700億円程度。国内総生産(GDP)の押し上げ効果はせいぜい0.1%ともいわれ、過剰に期待しない方がよさそうだ。

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