橋下市長の主張は構成要件を満たすのは難しそう
企業法務や会社法が専門の遠藤英明弁護士は、(1)朝日新聞出版が法人として形骸化していない(2)親会社と子会社の経理や財産が分離されている(3)親会社が子会社に指示して記事を書かせたようには見えない、といった理由から、
「全くあり得ないという訳ではないが、印象としては難しいのではないか。法的議論とは別に、親会社を巻き添えにして話題作りをするねらいがあるのでは」
と、橋下市長の主張が「法人格否認の法理」の構成要件を満たすのは難しいとみている。
「朝日新聞社の週刊誌部門を切り出し法人格をまとっただけ」としているが、これも無理がある主張だ。子会社の朝日新聞出版には書籍など週刊誌以外の部門が複数あるからだ。
週刊朝日の編集権は、08年の分社化以前から、朝日新聞本紙から独立しているとされている。最近の事例では、兵庫県尼崎市の連続変死事件で殺人などの容疑で逮捕され、兵庫県警本部内の留置場内で自殺した角田美代子容疑者をめぐり、週刊朝日は12年10月に別人の写真を掲載したとして謝罪したが、朝日新聞本紙は裏付けが取れないとして掲載を見送っている。
なお、遠藤弁護士は、
「(親会社が子会社の記事作成に)どれだけ関わっていたかによって、『法人格否認の法理』とは別に、不法行為について責任を問われることはあり得る」
とも話している。
橋下市長は、連載「ハシシタ・奴の本性」が最初に問題化した12年10月にも、親会社の責任を追及する意向を表明していた。このときは、その理由を
「解決能力は、朝日新聞社グループにしかない。だからそこを相手にした」
と説明。
「こういう記事を出された者はどうやって、事を解決するのか?司法手続きもあるが、それでは時間的に連載はそのまま進む」
とも述べ、連載を打ち切らせるためには親会社を攻撃するのが効果的だとの見方を示していた。