欧米に比べて非常に遅れていたがん患者に対するリハビリテーションが日本でも確実に進んできている。2013年 3月21日、東京で開かれた日本医学ジャーナリスト協会例会で、この分野の第一人者と目される辻哲也・慶応義塾大学医学部准教授 (リハビリテーション医学) が現状を報告した。
米国では1960年代から注目
頭頸部がんであれば嚥下や発声障害、乳がんではリンパ浮腫、開腹手術では呼吸器合併症などがん治療後にはいろんな機能低下が起きる。患者のQOL(生活の質)を高めるためにリハビリが重要なことは1960年代から米国で確認され、82年には全米の主要大学やがんセンターにリハビリ専門職員が配置された。
辻さんは2002年、県立静岡がんセンターのリハビリテーション科部長に就任、2005年に慶応大学病院に転じたが、当時、がんのリハビリは他のほとんどの病院では行われていなかった。
2006年のがん対策基本法で、がん患者の療養生活の質の向上がうたわれてから厚生労働省や関係学会などが医師、看護師、リハビリ専門職を対象にした研修会を開くなど人材養成が始まった。2010年の診療報酬改定で、研修を受け、経験を積んだ専任の医師や専門職がいる病院では「がん患者リハビリテーション料」が算定できるようになり、いっきょに広がり始めた、という。
慶応大学病院腫瘍センターは各診療科の入院患者だけでなく、全国で初めて外来患者を対象にしたがんのリハビリ外来も設けている。辻さんはセンターのリハビリ部門長でもあり、日本リハビリ医学会のがんリハビリ診療ガイドライン作りの代表者も務めている。「医療界にも患者さんにも、リハビリの重要性をもっと知っていただきたい」と訴えた。
(医療ジャーナリスト 田辺功)