回転寿司をめぐる、興味深いデータが出た。最近はレーンで「回っている」寿司を取らず、店員に「注文して」好きな寿司を食べる人が多数派になっているという。
マルハニチロホールディングス(東京・江東区)による調査では、回転寿司を1か月に1回以上利用する男女1000人に、「レーンを流れてくるネタ」と「注文して握ってもらうネタ」のどちらを多く食べるかを質問した。
全体の61.1%が「注文派」、特に関東に多い
2013年3月27日発表されたその結果によれば、「注文の方が多い」「やや多い」と答えた「注文派」は、61.1%に上った。「回転派」は21.4%に留まっており、3倍近くの差をつけたことになる。
男女別に見ると女性が65.2%と男性(57.0%)よりやや多い傾向があり、年代では50代が最も多かったが、20代でも61.8%と高い割合が出るなど、「注文派」は世代を問わず広がっている。年齢に地域では関東の68.6%に対し関西が53.6%と、かなり「東高西低」の様相を示した。
実態を確かめてみた。東京・新宿のある回転寿司店。寿司をつまみながら周囲の客の様子を眺めていると、隣の席に座った大学生風の若い男性が、レーンを流れる皿を指差して店員に声をかけた。
「すいません、これなんですか?」
「ああ、『バチトロ』(バチマグロのトロ)ですね」
「へえー、じゃあ、それ握ってください」
えっ、と思わず目を丸くした。目の前にあるのに注文? 見たところ握りたてのようで、鮮度もまだまだ高いようだが……しかし店員は当然のように注文を受け付け、間もなく件のバチトロが男性の前に運ばれた。この男性は結局1度も流れている皿は取らず、すべて注文で済ませていた。
回っている皿はもはや「飾り」だ
他の客を見ても調査どおり、「注文派」が多いようだった。子供連れで来ていた若い女性も、終始レーンを眺めて品定めをしていたが、実際にはほとんど手を伸ばさない。もちろん逆に一切注文をしないという人もあったが、やはり少数派だった。注文派の増加はどうやら間違いないようだ。
こうした流れを受けて回転寿司店側も、注文システムの充実を進める。最近増えているのが、客席にタッチパネル式の端末を備え付け、画面上から好きなネタを頼めるタイプの店だ。スシロー、かっぱ寿司、無添くら寿司など大手3社はいずれも導入を開始している。
ここまで来ると、もはや「別に回っている必要がないんじゃ……」という気さえしてくる。実際、「回らない回転寿司」はすでに存在する。12年にオープンした「魚べい 渋谷道玄坂店」「元気寿司 渋谷店」だ。回転レーンを全廃し、代わりに3列の高速運搬レーンを設置、端末から注文を受け付け次第、即座に客の眼前に寿司を届ける。
両店を運営する元気寿司(宇都宮市)によれば、やはりこうした業態も、注文派が増える中、注文にいかに迅速に対応するか、という試行錯誤の中で生まれたという。「好みの寿司が新鮮な状態で早く届くのが、好評のポイントです」と担当者は話していた。