日本の鉄道技術、海外市場の開拓へ インド、ブラジル、ベトナム狙う

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   日本の鉄道技術が続々と海を渡ろうとしている。新幹線に代表される高速に加え、安全性、省エネ、正確な運行など、総合的な強みを武器に、インフラ輸出の大きな柱と期待されている。

官民連携で売り込み

   ここにきて売り込みが有望視されているのがインド。同国では高速鉄道の整備構想として、ニューデリーやムンバイなど主要都市を走る7路線が計画され、日・仏・スペインなどが売り込み合戦を繰り広げている。このうち、真っ先に整備予定の西部ムンバイ(マハーラーシュトラ州)―アーメダバード(グジャラート州)の間約500キロへの新幹線採用を狙っている。

   実現すれば現在の特急で10時間かかるのが2時間程度に短縮される。ここの事業化調査は仏企業が受注したが、約1兆円規模とされる本工事を落札しようと、官民連携して巻き返しに懸命だ。

   インドのシン首相と野田佳彦首相(当時)の会談(昨年11月、カンボジア)で、日本の新幹線システムの採用を念頭に両国間で具体的な協議を進めていくことで一致。今年2月にはアーメダバードでセミナーも開き、梶山弘志・副国土交通相、大橋忠晴・川崎重工業会長、石司次男・JR東日本副社長らがトップセールスで売り込み、シン首相の来日(5月下旬予定)の際に、首脳会談で合意の見通しとの報道もされている。

   新幹線技術の輸出は台湾に続き2例目だが、インドには車両や運行システムなどを一括して提供する「パッケージ型インフラ輸出」としたい意向で、実現すれば第1号になる。 グジャラート州で日本企業専用の工業団地建設が進められ、ムンバイでもインフラ整備に日本政府が巨額の資金援助をする方針を示すなど、同国の深刻な電力不足もにらみ、国が新幹線受注の条件整備に乗り出していることが大きなポイントになっている。

   ブラジルでも、リオデジャネイロ-サンパウロ間(総事業費2兆円)が動き出しそうで、三井物産や日立製作所などの日本連合が受注を目指している。新しい入札条件で「大事故を起こした事業者は応札できない」と明記され、「中国が外されるということで、日本に有利になった」(国交省筋)。ベトナムでは、首都ハノイ-ホーチミン間に新幹線を採用する方針とされる(総工費5兆円規模)。

   また、2月の日米首脳会談では安倍晋三首相がオバマ大統領に対し、ワシントン-ニューヨーク-ボストンを結ぶ鉄道構想「北東回廊」(総延長約730キロ)の第1区ワシントン-ボルチモア(約65キロ)に、JR東海のリニア技術採用を売り込んだ。

海外勢との競争は一段と激しく

   新幹線に限らず、日本の強みは運行技術などソフトも含む総合力。「新幹線は開業以来、乗客の死傷者がゼロ。環境性にも優れている」(2月のインドでの梶山副国交相発言)というメリットはハードだけでは達成できない。2007年に開業し、東海道新幹線の「700系」をベースにした車両などハードを中心に採用した台湾でも、日本のソフト導入に向け、運行主体の台湾高速鉄路がJR東海とコンサルティング契約を結ぶ交渉が進んでいる。

   東京メトロも、ベトナムの首都ハノイ市に対し、市が整備を進める鉄道網の運行管理や人材育成などを支援する現地法人を設立して、日本のノウハウを提供する。

   JR東日本が開発を主導した非接触型ICカード「Suica」を使った自動改札機がインド南部チェンナイ市地下鉄(2015年開通予定)で導入されるなど、運行の周辺に位置する技術の輸出も広がる。

   ただ、インフラ輸出は多くの国が目指すところ。独仏など欧州勢との長年の競争に加え、中国の台頭、さらに自動改札機では韓国のサムスンが急成長するなど、海外勢との競争は一段と激化するのは必至。インドでの取り組みのように、政府の支援を旨く組み合わせた「オールジャパン」の取り組みが受注のカギを握るのは間違いない。

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