米疾病対策センター(CDC)が、発達障害の一種である注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関して興味深い調査結果を発表した。高校男子の5人に1人がADHDと診断されたというのだ。
ADHDへの理解が広がり、診断方法の進歩が影響したせいもあるが、それだけで衝撃数字は説明できるのだろうか。
親のしつけのせいでも、本人の努力が足りないわけでもない
CDCが2011年2月~12年6月に実施した「子どもの健康に関する全米調査」の結果を、米ニューヨークタイムズ電子版が2013年3月31日に報じた。4~17歳でADHDと診断されたのは約640万人に上る。2007年の調査結果と比べて16%増、過去10年では41%も増えているという。このうち3分の2は、「リタリン」や「アデラル」といった向精神薬を処方されている。効き目は大きいが、依存症のような副作用を伴う恐れもあるという。
ADHDはどんな症状か。製薬会社の日本イーライリリーのADHD専門サイトに、詳しい説明がある。集中力が続かない、忘れっぽい、じっとしていられない、衝動的に動くといったもので、例えば部屋を散らかしっぱなしにしたり、授業中に先生の話を聞けなかったり、何か目立つものを見つけると周りが危なくても駆け出したりとの行動が見られる。
いずれも子どもの場合は誰でもある程度起き得るが、度を越しているのが特徴だ。発達障害のなかでも知恵の遅れを伴わないために「障害」と気付かれず「親のしつけが悪い」「なぜほかの子と同じようにできないのか」と誤解され、本人や親も悩む原因となる。
育て方やしつけとは関係なく、本人の努力が足りないわけではない。改善させようと本人に必要以上に厳しく接するのは間違いだ。ADHDの特性を理解すると同時に、親は子をサポートしながら学校や福祉、医療機関と連携して、場合によっては薬による治療を行う必要がある。
国内では、学齢期に当たる6~15歳の子どものうちADHDで日常生活や学習面に支障をきたす割合は2.5~3%ほどだ。これに対して米国では、年齢幅はやや広いが4~17歳では11%、高校生男子に限るとほぼ20%にまではね上がる。米国での割合が拡大している要因としてNYタイムズでは「医師によっては、不注意が原因の症状ならADHDと認定してしまう」「保護者が我が子を落第させないために医師に頼み込んで、子どもの困った行動を何とか治療してもらおうとする」との事例を紹介。必ずしもADHDではない子が調査結果でカウントされている可能性をにおわせている。