兵庫・加古川市や高砂市で2012年、猫などの動物の死骸14体が相次いで見つかった事件で、犯人が「アライグマ」である可能性が浮上した。
アライグマといえば「かわいい」イメージを持っている人も多く、動物園でも人気が高い。しかしこれまでにも、アライグマが動物を襲った例は少なくないのだ。
人間の犯行と動物の両面から捜査を続けている
両市では12年5月から7月にかけて、頭や腹を切られた猫、キジバトの死骸14体が相次いで見つかり、県警加古川署は専従捜査班を組んで犯人の捜索を行っていた。
ところが13年4月2日、産経新聞がこの事件について「アライグマの仕業による可能性が高い」と報じたのだ。獣医師が一部の死骸を鑑定したところ、皮下に歯の痕のようなものが見つかったという。アライグマの犬歯で噛まれると刃物で切られたようになるとのことで、加古川署が「アライグマの犯行」との見方を強めて専従捜査班を解散したというのだ。
加古川署にこの事件について問い合わせたところ、「アライグマの歯の痕と断定したわけではなく、アライグマがやったと決め付けてもいない。捜査班も解散していない」と報道を訂正した上で、死骸に何らかの動物の歯の痕があったということを明かした。
加古川市周辺では現在に至るまでアライグマの捕獲が多く、あくまで死骸に残っていた痕がアライグマのものかもしれない、という段階で、野犬やその他の動物のものという可能性もある。最近は動物の死骸の発見はなくなったそうだが、引き続き人間の犯行と動物の両面から捜査を続けており、アライグマの捕獲も行っているとのことだ。
米で猫10匹殺害、シェパードに噛み付いた事例も
アライグマは北米原産で、基本は水辺近くの森林に生息しているが、人家の近くにも平然と出没するなど色々な環境に適応している。大きいものは頭から胴体で60センチ、しっぽは40センチ、体重は10数キロになる。
日本では1962年、日本モンキーセンター(愛知・犬山市)で飼育されていたアライグマの脱走がきっかけで野生化した。環境省が2007年に発表した自然環境保全基礎調査の結果によると、全国36都道府県で分布が確認されている。農作物を荒らすなどの被害があり、現在各地でアライグマ出没の注意喚起がなされている。
(13年4月5日追記:1962年に同センターから脱走したのはオス2匹で、その2匹を捕まえて独自に飼育した民間人がメスを手に入れて40数頭まで増やし、引っ越す際に手放して行ったのが野生化のきっかけとなった。今回の兵庫県の事件と日本モンキーセンターは直接の関係はない。)
加古川市、高砂市の事件が「アライグマの犯行」かは不明だが、アライグマの生息実態調査を行っている「関西野生生物研究所」代表の川道美枝子氏によると、「アライグマがネコやハトを襲うことは事実」だという。
大阪・豊中市では11年8月、野良猫がアライグマに襲われて死んだと見られる事件があった。千葉県では04年の元日、住宅街でアライグマが猫を襲っていると警察に連絡が入った。この時は駆けつけたレスキュー隊によって事なきを得たようだ。
CNNでも06年8月、米ワシントン州で野生のアライグマが凶暴化し、猫10匹が殺されたという報道があったほか、動物園で飼育されているアライグマがハトを襲っている様子を撮影したYouTube動画もある。
川道氏が行った聞き取り調査でも、大型犬のシェパードを含む飼い犬が噛まれたという報告があったそうだ。ほかにもつばめのひなや野うさぎ、カメを襲ったり食べたりしたなどの例があるそうで、「基本は小動物を食べているようですが、チャンスがあれば何でも食べるのがアライグマです」とのことだ。
なお、こちらは「動物の犯行による可能性は低い」(広島県警生活環境課)とのことだが、広島・呉市でも12年3月から13年4月にかけて切断された猫の死骸が相次いで発見されており、現在総力を挙げて昼夜捜査しているとのことだ。どちらの事件も早急な解決が望まれる。