パナソニックは2013年3月28日、2015年度まで3年間の中期経営計画を発表した。内容自体は新味に乏しく各紙の見出しは「次の成長のタネ見えず」の類で揃ったが、業界を驚かせたのは同時に発表された大坪文雄会長(67)が6月下旬の株主総会で退任するとの人事。2月にいったんは留任が発表されていただけに、旧体制からの決別を急ぐ決意と無念さがにじむものとなった。
「(大坪会長が)自分の意志でこのタイミングの辞任の発表を決めた」
記者会見したパナソニックの津賀一宏社長(56)は、突然の大坪会長辞任発表についてこう述べた。
「3月のある時期」に会長辞任の意志を示した?
パナソニックは例年、2月ごろに次年度の役員人事を発表する。13年も既に大坪氏の代表権を持つ会長の6月以降の留任を含むものを発表済みなだけに、唐突感が強かった。津賀社長によると、「3月のある時期」に大坪氏が会長辞任の意志を示したという。津賀社長は「当然、(経営悪化の)責任を感じ、今できることは何なのか自問自答されて決めたと思う」とも説明、経営悪化の引責辞任であることを明確に認めた。
パナソニックは大坪氏が社長だった2012年3月期連結決算で、7721億円の最終赤字を計上。会長となった2013年3月期も、大坪社長時代に進めた三洋電機の買収が裏目に出て電池事業の減損処理などに踏み切るため、7650億円もの最終赤字に陥る見通し。社長は退いたとはいえ、これで代表取締役会長にとどまり続けるのはどうか、という判断だったのだろう。
12年の株主総会でも「大坪代表取締役会長」に批判の声が上がっていたし、月刊誌「FACTA」4月号では、「パナソニックが6月に元経済財政担当相の大田弘子政策研究大学院大教授を女性初の社外取締役として起用することは、『大坪会長留任のめくらまし』と酷評する向きもある」とまで書かれてしまっていた。今年の株主総会でも後輩たちの前で大坪氏が「針のむしろ」となるのは必至で、そういう事態を避けたい意向もあったかもしれない。