済美高校「エースの5連投」に異議 投手生命絶たれる危険がある

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1人に全試合を任せず、複数の投手を用意する

   甲子園で全試合を投げ抜いた結果、ひじを壊して投手生命が絶たれた例がある。1991年、夏の全国高校野球大会で決勝に進出した沖縄水産高・大野倫投手だ。1回戦からの5試合すべてを完投してきたが、地方大会の時点で痛めていた右ひじが悲鳴をあげていた。「沖縄県勢初の夏制覇」の期待がかかる中、決勝の大阪桐蔭戦にも登板したが、既にひじは限界で、13失点を喫して敗れた。合計6試合、773球を投げた大野投手は、甲子園が最後のマウンドとなってしまった。

   後にテレビ番組のインタビューで、決勝での登板を「監督と僕の信頼関係の中での話」と語っている。大野投手の場合、大学進学後に打力が開花して、読売ジャイアンツにドラフト指名されるまでに成長した。それでも、高校時代で投手としての将来が閉ざされてしまったのは悲劇だ。

   小中学生に対する野球の指導経験をもつスポーツジャーナリストの菅谷齊氏は、1人の投手に全試合を任せるのではなく「2、3人用意するべき」と話す。甲子園に出てくる高いレベルの投手は、練習で相当の投げ込みをしているのでスタミナは心配ない。それでも1人だけが重い負担を強いられ続ければ、肩やひじを壊す懸念がある。

   少年野球では、子どもたちは目標を「甲子園出場」に据える。その夢が実現したとなれば「たとえ腕が折れても投げたい、と考えても不思議ではありません」。だが、特に安楽投手のような将来プロの道を嘱望されるような人材には、指導者の判断力が問われるという。育成面を優先して、故障につながるような無理はさせない、だからこそ戦力的に複数の投手を育てる必要があると菅谷氏は説く。

   大会の日程にも注文を出す。今大会、準々決勝は3月31日と4月1日の2日に分けられたが、済美は4月1日の第2試合に試合が組まれたため、決勝まで3連戦を強いられた。公平性の点からも、「準々決勝は1日で終えて、準決勝と決勝の間に1日休みを設けるべき」と考える。

   甲子園という舞台では、「勝利至上主義」にならざるを得ないだろう。後援者や地元の期待も大きくなる。それでも、選手育成に優れた監督であれば「目先の1勝」よりも子どもの将来を最優先にしてほしいと菅谷氏は話す。

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