国内の携帯電話大手3社が、お茶の間のテレビを使ったインターネット動画見放題サービスによる顧客囲い込みを急いでいる。スマートフォンの普及は進んでいるが、スマホの人気機種が移ろうなか、契約をつなぎ止めるとともに、新たな収益源とする狙いもある。
TVに「スティック」をつなぐだけ
「あなたのテレビがスマホになる。テレビの大画面で、スマホの機能が楽しめる!」――。最近のKDDIの宣伝文句だ。
KDDIが2013年2月に発売したのは「スマートTVスティック」と呼ぶ機器で9800円程度。縦3センチ、横10センチ、高さ1.5センチほどの箱状。これを「HDMIケーブル」と呼ばれる配線を使ってテレビの背面につなぐだけだ。
自宅が光回線やケーブルテレビなどでインターネットにつながる。無線LANルーターを設置していればOK。ルーターがない場合でもスマホ利用者にはKDDIが割安で貸し出す。地上デジタル放送を視聴できるテレビなら対応できる。操作は付属のリモコンを使うが、専用アプリをダウンロードしたスマホをリモコン代わりにすることも可能だ。
それで何ができるかというと、これまでスマホの画面上で楽しんでいたインターネットの閲覧、映画や音楽の鑑賞などが、舞台自宅のテレビの大画面に移せるのだ。例えばKDDIはスマホ向けに「ビデオパス」と呼ぶ月額590円の映画などの動画見放題サービスを提供しているが、これもテレビの大画面で見ることができる。
わずかな追加投資で20万円の価値
どこでも手軽にネットを楽しめるのがスマホの利点だが、外出先ではそれで良くても、自宅にいるなら大きな画面の方が見やすいというもの。動画投稿サイト「ユーチューブ」や映画配信サービスなどを、パソコンのように簡単な操作で見られるテレビは「スマートテレビ」と呼ばれ、国内外でソニーやパナソニック、韓国LG電子などが発売しているが、おおむね20万円程度とまだまだ高い。そんななか、1万円以内の新規投資で自宅のテレビを「スマート化」できるのならしてみたい、という需要を当て込む。
NTTドコモは同様のスティック機器を3月1日、8925円で発売。やはりスマホ向けに月額525円で提供している、国内外の映画、テレビドラマなど7000タイトル以上が見放題の「dビデオ」をテレビ画面で見られる。ソフトバンクは、スティック機器は無料だが月額490円の利用料を徴収する形で2月からサービス開始。動画や音楽が利用上限なしで楽しめる「ウーラ」(月額490円)が売りだ。
携帯電話3社の狙いは顧客囲い込みと利用料金徴収にあるが、「動画見放題」で足並みをそろえたことによって、スティックによる「スマートテレビ」の普及が進む可能性も秘めている。これがインターネット動画ビジネスの活況につながれば、コンテンツ制作者には朗報と言えそうだ。