東京・渋谷区議会が2013年3月29日、風俗営業適正化法(風営法)の「ダンス規制」の見直しを求める請願を全会派一致で採択、衆参両院に提出する意見書案を決定した。
ダンス規制には各方面から批判の声が多く、今回の区議会の採択を機に改正への期待が高まっている。
渋谷区議「解釈の幅が多くて問題ある法律だと思う」
風営法施行規則では、ダンスについて「客室が66m2以上でその5分の1以上が踊り場面積としなければならない」「電球の明るさが5ルクス(一部施設では10ルクス)以上でなければならない」、施行令では「営業時間は住居地域で午前0時まで、近隣商業地域で午前1時までの制限」などと定められている。また、風営法の解釈運用基準では、「深夜における飲食店営業の規制等」について「不特定多数の客に歌、ダンス、ショウ、演芸、映画その他の興行等を見せる行為」を「営業者側が積極的な行為によって」行わせることを禁じている。
ダンス規制削除を求め署名を集めている「Let's DANCE署名推進委員会」は「客室面積66m2(20坪)以上ないと営業の申請ができない、深夜営業すると罰金、営業停止処分などがあるのもおかしい」「多くのクラブ、ライブハウスでは健全に音楽、踊りを通じて人々が交流しており、薬物や暴力の排除・根絶に取り組んでいる」「警察の恣意的な解釈によって、規制や取締りが可能になる危険性をはらんでいる」と指摘している。
作家の石田衣良さんは「お上が庶民の文化や遊びを道徳的に律するというのは、江戸時代の封建制の話ではないのだろうか」「踊りたい人は朝まで踊らせてあげたい。これって、不道徳な願いなのかな」、クレイジーケンバンドの横山剣さんも「若いコにとっても、クラブにいた方が安全だったと思うんですけどね。最低限の秩序はそこにもある訳ですから、悪いことばかりではないですよね(中略)ヘタに深夜の街角に放り出されたら、治安的にはそっちの方がよっぽど危険でしょう」と疑問を投げかけていた。
今回請願を採択した渋谷区議会の議員・浜田ひろき氏はツイッターで「私としては風営法は行政への委任事項、裁量、解釈の幅が多くて問題ある法律だと思っています。時代遅れというのもあるんですが、こういう部分の腐敗は現在進行形であるように思います」とツイートしている。風営法のダンス規制への批判は主に「ダンスする自由を認めるべき」「ダンスが危険というような考えはおかしい」「曖昧な法律を改正すべき」という考えから発生しているようだ。
町田市議会でも「ダンス規制見直し請願」採択
渋谷区以外の自治体でも、ダンス規制見直しへの動きは広まっている。
東京・町田市議会では13年3月11日、「『ダンス規制法』の見直しに関し国に意見書提出を求める請願」が全会派一致で採択され、3月27日にはダンスを規制対象から削除することなどを求める意見書案を決定した。
東京・世田谷区議の田中優子氏は12年6月のブログで、「純粋にダンスが好きで、音楽と踊りを楽しんでいる大半の人たちのためにも、時代遅れの風営法規制は、なんとしても改正してもらいたい」として、「Let's DANCE」への署名を呼びかけている。
東京・港区議会には13年2月、京都府議会には13年3月にダンス規制を見直す意見書の提出を求める請願が寄せられている。京都府議会では不採択となったが、港区議会では継続して審査されており、採択の可能性は残っている。
今回の渋谷区議会の採択で、「Let's DANCE」の呼びかけ人である弁護士の中村和雄氏がブログで「15万人に達したレッツダンス署名の賛同者をさらに増やして、法改正を実現していきましょう」と書いているほか、DJや飲食店経営者、音楽好きの人々がツイッターで「港区、新宿区なんかも続かないと!」「渋谷から広げていこう」「広めたいし、広めなければ」などと書き込んでおり、法改正に向けた運動にさらなる意欲を示している。