証券取引所を経由しないで株式を取引する私設取引システム(Proprietary Trading System=PTS)が急拡大している。2013年1~3月の売買代金は8兆円を超え、四半期で過去最高を記録した。東京証券取引所第1部の約6%に匹敵する規模にまで育ってきた。
アベノミクス効果による「株高」が既存の証券取引所だけなく、PTS取引にも波及している。
同じ銘柄でも「株価」が違う
国内でPTSを運営するSBIジャパンネクスト証券と野村ホールディングス系のチャイエックス・ジャパンによると、2013年1~3月の売買代金は、SBIジャパンネクストが4兆8379億円、チャイエックスが3兆2020億円で、2社合計の売買代金は8兆399億円となった。前年同期に比べて、約7割増えた。
その背景にはアベノミクス効果による円安・株高の影響があるが、SBIジャパンネクスト証券は、「PTS取引はここ2年ほど、ずっと右肩上がりです。12年の売買実績は11年と比べて1.8倍も伸びました」と話す。
要因は、取引時間が長いこと。SBIジャパンネクストの場合、昼間は8時20分から16時まで(デイタイム・セッション)。加えて、19時~23時59分まで開いている夜間取引(ナイトタイム・セッション)がある。
取引できる銘柄は東証や大証に上場している普通株式や上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などのほぼすべて(約3600銘柄)で、利便性は高い。
PTSというと、かつてはマネックス証券や松井証券などのインターネット証券が、やはり夜間取引ができること「売りもの」に、個人投資家の利用を促していたが、あまり振るわなかった。それは、PTSを運営する証券会社で取引している投資家同士でしか売買できなかったから。現在、マネックス証券などはPTSを閉じている。
一方、SBIジャパンネクストやチャイエックスのPTSは、国内外の証券会社と「接続」して、投資家が証券会社を通じて取引する。「いわば、既存の証券取引所と同じ位置づけでサービスを提供することになるので、より多くの投資家とつながり、売買できるわけです」(SBIジャパンネクスト)と説明。参加する投資家層のすそ野拡大が取引の活性化につながっている。
しかも、同じ銘柄でも「株価」が、東証などと異なる点が魅力になっている。東証では、売買価格が1株あたり最低1円単位だが、PTSでは株価の刻みが10銭単位で取引できるので、東証より安い価格で買ったり、高い価格で売ったりできるチャンスがある。投資家はきめ細かく売買できるわけだ。