違う非公式情報がこの先出てこないかが注目点
中国発の新型感染症といえば、思い浮かぶのは2002年から2003年にかけて世界的に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)だ。今回の発表を当時と重ね合わせて警戒を呼びかける人もいる。
「2月から発生していたものが、3月31日付けでまとめて発表というのがこの国(編注:中国)らしい」――03年当時、北京に駐在していた関西福祉大学の勝田吉彰教授(渡航医学)はこう話し、SARSのときと当局のやり口が同じだと指摘した。
そして、当時の北京の様子を振り返り、「ささっと公安が出動して、疑い例や可能性例の住む住居周辺に黄色いテープを手際よく張って出入り禁止にして(感染と情報の拡散を)抑え込むのでしょう」と推測する。
当時の中国政府は外部への情報公開を拒み、02年後半から感染は起こっていたのにもかかわらず、03年3月初旬までWHOの調査を受け入れなかった。海外から「患者隠し」の批判が強まってようやく感染者数および犠牲者数を大幅に上方修正した経緯がある。
この対応を「感染症の発祥地でありながら、人命にかかわる重大な情報を隠ぺいする体質が、世界的な感染拡大を招いたことは明らかだ」と03年4月22日付の読売新聞社説は断じていた。勝田教授の見立てでは、今回も最悪、同じような事態が引き起こされる可能性があるというわけだ。
ただ、03年SARSの時と違い、現在では中国でもインターネットが普及しているため、「微博(中国版ツイッター)」によってあっという間に情報が漏れ出すと勝田教授は見ている。その上で、こう述べた。
「公式発表で『ヒトヒト感染能はないものと思われる』とされているが、ヒトヒト感染が本当に無いのか、違う非公式情報がこの先出てこないかが注目点だ」