12年10月にも重傷を負っていた?
こうした話からすると、男性はかなりの濃度の酸を女性の靴に塗ったように思われる。ただ、安田准教授は、濃度に関しては「想像がつかない」と話す。
「フッ化水素もある程度は気化するので、塗られてから時間がたっていれば、乾燥して濃くなります。何%というのはなかなか難しいですね」
女性は12年10月にも同様の被害にあっていたという話も出ており、その際にはブーツを履いた際に痛みを感じたため、病院で手当てを受けた。足の指がただれ、右足に1か月の重症を負っていたが、被害届は出さなかったという。
さらに、今回の事件は足指切断よりも重大な事態を引き起こしていた可能性もある。安田准教授は「今回のような場合、足だけで死ぬことはないと思いますが」としつつ、フッ酸の危険性をこう指摘した。
「全身にあびたり、処置が遅かったりすると、フッ素イオンが細胞内のカルシウムを食っていってしまい、低カルシウム血症をひき起こす。心臓が止まるなどして、亡くなることもあります」
日本中毒症状センターによると、口に入った場合の最小致死量は1.5g。皮ふに触れた場合については、100%のフッ酸が顔にかかった男性が、10時間後に死亡した例がある。また、1982年には歯科でフッ酸を間違えて塗られた女児が死亡した事件があった。
今回、被害女性は痛みが出てすぐに病院にいったため、早期に適切な処置を受けられた可能性が高い。そのため「(低カルシウム血症などにいたらず)足だけで済んだのではないか」との見方を准教授は示している。