「脱水性の壊疽をおこして骨を溶かす」
「フッ酸だけはダメだろ。あの痛みは生き地獄」「フッ酸はガチで洒落にならねぇって…」――ツイッター上では、化学関係の従事者と見られるアカウントらから、事件についてこんなコメントが相次いでいる。フッ酸とはいったいどんな毒物なのか。
実は、ガラスの艶消し、半導体のエッチング、金属の酸洗いなど、工業用分野で広く使われている。ただし、毒劇物法で毒物に指定されているので、一般の人が入手することはできない。
用途から工業現場での事故が多く、産業医科大学病院・形成外科長の安田浩准教授によると、「ぱっと見、水と似ている」ため、ふれても気がつかないケースが見られる。時間がたって、ピリピリとした痛みを感じはじめてから、病院にかかる人もいるという。
「フッ化水素は細胞内で、フッ素イオンと水素イオンにわかれるんですが、フッ素イオンというのは不安定なんです。そこで細胞内のカルシウムと結合して安定する。肌につくと、脱水性の壊疽をおこして骨を溶かすんです」(安田准教授)
日本中毒症状センターによると、皮膚についた場合、「初期症状の重篤度は濃度によって異なり、濃度50%以上であれば直ちに組織の崩壊をきたし痛みを感じるが、濃度20%以下の場合は曝露後24時間経過してから痛みや紅斑が出現することもある」そうだ。