「出、出た~ タフな東大生ww」「タフな東大生キターーーーー(°∀°)ーーーーーー!!」――2013年3月26日におこなわれた平成24年度東京大学卒業式の最中、ツイッターにこんな文字列が踊った。
「タフでグローバルな東大生の育成」を掲げる濱田純一総長の告辞に、「タフ」という言葉がなんと計23回も登場していたのだ。
「長い総長告辞に耐えるタフな東大生」
告辞によると、タフにはいろいろな意味合いがあり、とりわけ社会が東大生に期待しているタフさは、大きく知的なものと社会的なものとの2つに分けられるという。
知的なタフさは、課題に対して粘り強く思考を重ねたり、実験や観察を繰り替えしたりといった姿勢をさす。一方で、社会的なタフさとは「社会的なコミュニケーションの場におけるたくましさ」ということらしい。
「何事であれ物事を正面から受け止め、それに粘り強く向き合っていくという、きわめて素朴な事柄が、タフさの本質的な部分であるように思います」
しかし、会場の東大生は、必ずしもこのありがたい告辞を「正面から受け止め」た人ばかりではなかったようだ。手元のスマホなどをいじり、告辞と同時進行でなんとツイッター発信する人が続々出始めたのだ。
「時代の精神よりタフの回数数えるべきだった」「ここまで8タフ」などと「タフ」と発言された回数を数えることに興じたり、「総長水飲む。総長ののどがタフじゃない」「総長がタフって言うたびに手話の人がめっちゃタフっぽい格好するのうける」「とりあえずタフって言いたいだけっぽいけどこじつけ方が下手すぎてシュール」などと突っ込んだり、実況に明け暮れたりのやりたい放題。
寝ている人も多かったようで、「両隣のタフな東大生は熟睡している」「総長の呪文『タフ』により状態異常:睡眠になってしまった」「総長のつまらない話に粘り強く向き合えないタフとは程遠いみなさん」「長い総長告辞に耐えるタフな東大生」「ここで居眠りする人はタフさが足りない」などと皮肉る人も現れた。
「卒業生に伝えたいこととしていいなあと思える話だった」
さらに、総長のもう一つのキーワード「グローバル」が登場すると
「_人人人人人人人人_
> 突然のグローバル<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄」
と盛り上がり、告辞終了後には「総長告辞、23タフでした」と計測結果が報告された。そして、「とてもタフな話だった」「Twitterのお陰で最後まで眠らずに聞けたのでTwitterによってタフになれたと言ってよい」といった感想が相次いだ。
ちなみに、東大の公式サイトにアップされている告辞を数えたところ、確かにタフは23回、グローバルは8回登場していた。
もちろん、「卒業式、総長の話はたしかにタフということばが多かったし長かったけど卒業生に伝えたいこととしていいなあと思える話だった」と一定の評価をしている人もいないわけではない。
ただ、こうした揶揄が続出したことは、単に東大生が世の中を舐め腐ってるからだとは言い切れない。
濱田総長は09年に就任し、秋入学こそ頓挫したものの、後期試験での推薦制度の導入等、「タフでグローバルな東大生の育成」のための改革を急ピッチにすすめている。何につけても「タフでグローバル」を強調する方針に、辟易する空気も学内の一部にはあるようだ。
実際、「社会から期待されてないです…」「結局タフになる前に心折れた」とツイッターでこぼす東大生も見られた。タフな学生を育てるのもいいが、その前にタフでない教員が身体を壊してしまうとして、大学を去っていった教員もいるという。
もっともツイッターの反応を見る限り、すでに東大生には、大事な総長告辞をさえ茶化してしまうようなタフさがあることだけは間違いないようだ。