Jリーグで入場禁止処分、米大リーグでは逮捕も
今回のレーザー騒動も、本来なら開催地であるヨルダンのサッカー協会が対処すべきだろう。だが、サッカー元日本代表の武田修宏氏は3月27日にフジテレビの「とくダネ!」に出演した際、過去に中東での試合で「練習場にクギが巻かれていた」「宿泊しているホテルで音楽を大音量で流され続け、睡眠を妨げられた」とのエピソードを披露した。これでは相手国側にレーザー光線の取り締まりなど、期待できそうにない。
AFCやFIFAが具体的な対策を立てるかも疑問だ。「禁止品」に指定しているとはいえ、小型のレーザーポインターを観客席に持ち込むのはそれほど難しくないだろう。一方で数万人収容の客席を試合中ずっと見張り続け、どこから光線が放たれたかを特定するのは容易ではない。ただ、Jリーグでは以前、FC東京がレーザーポインターを使った観客を見つけ、後に入場禁止処分を出している。W杯予選クラスの試合でいまだに止まないのは、FIFA側に「レーザー撲滅」を徹底する姿勢が薄いのだろうか。
ファンがヒートアップして相手チームの選手にレーザーを当てるのは、欧州クラブチームの試合でも起きている。最近でも2013年2月26日に行われた「スペイン国王杯」準決勝、バルセロナ―レアルマドリード戦で、バルセロナのメッシ選手、レアルのロナウド選手という両エースが目を狙われたという。
サッカージャーナリストのマーチン・ロジャース氏は、米ヤフースポーツに寄せた3月4日付コラムでレーザー光線の危険性を警告した。網膜が強い光に耐えられず、光線を数秒間浴びただけで短時間失明状態になったり視界がぼやけたりする症状が出て、その後も視力が完全には回復しない恐れがあるという。新型のレーザーポインターは、網膜に強いダメージを与えることは極めて少ないようだが、旧型は深刻な影響を与える懸念がある。また光線の威力が50ミリワット以上になると危険だと指摘。市販のポインターは3~5ミリワットが標準だというが、建設業や医療の現場で使われる「強力版」も入手は可能なようだ。
ロジャース氏によると、米大リーグでは2012年、観客の17歳の少年が相手チームの投手に向けてレーザーを当てたのが見つかり、逮捕される事態に発展したという。
大阪府眼科医会の公式サイトを見ると、国内では以前、高校の授業中に生徒がいたずらで女性教諭の目にレーザーポインターを3メートルの距離から約1秒間照射したところ、この教諭は網膜にやけどを負い、後遺症として視力が0.2に低下したとの事例を紹介していた。