サッカーワールドカップ(W杯)アジア最終予選で、日本はヨルダンに敗れた。本戦出場に向けて日本の優位は揺るがないが、世界に先駆けてブラジル大会への切符を手にしたかっただけに悔しい黒星だ。
試合中、ピッチ上の選手に「アウェーの洗礼」が浴びせられた。観客席からレーザー光線が照射され、プレーを邪魔したのだ。行為自体はもちろん非難されるべきだが、選手の視力に致命的な影響を与えかねない点は重大だ。
FIFAはレーザーポインター持ち込みを禁止
ヨルダンの首都アンマンで2013年3月26日に行われた日本‐ヨルダン戦、「事件」は前半39分に起きた。相手のフリーキックの場面、ゴールを守る川島永嗣選手の顔をめがけて、緑色のライトが当てられたのだ。守備陣に向かって声をかけながら左右に体を移動させる川島選手を、光線が執拗に追いかける。ついには目元をめがけて集中的に照射された。川島選手は気にするそぶりを見せない。結局失点にはつながらず、大事に至らずにすんだ。
ところが後半26分にも「暴挙」が繰り返された。1点を追う展開で日本がPKを獲得、同点とする絶好のチャンスだ。ここでキッカーの遠藤保仁選手を、またも緑のレーザー光線が襲う。遠藤選手は目をつぶったりすることなく、そのままボールを蹴ったが相手キーパーにはじかれてしまった。試合後、遠藤選手はレーザーの影響を否定したが、プレー妨害に等しい行為だ。W杯出場権をかけた重要な試合での卑劣な行い。日本サッカー協会は、アジアサッカー連盟(AFC)に抗議文を提出したことを明らかにした。
中東でのアウェー戦では、過去にも同じような妨害があった。2008年9月、当時南アフリカ大会出場を目指していた日本代表は、敵地でバーレーンと対戦した。このときに、今回ヨルダンでも標的にされた遠藤選手や中村俊輔選手が「攻撃」を受けたのだ。
レーザー光線を発する機器は、観客席への持ち込みが許されないはずだ。国際サッカー連盟(FIFA)の公式ウェブサイトを見ると、2010年のW杯南アフリカ大会の「競技場での行動規範」には、入場時の「禁止品」のひとつに「レーザーポインター」と明記されている。2014年のブラジル大会のページには、まだ「行動規範」が掲載されていないが、同様の処置がとられるのは間違いない。最終予選でも当然、使用不可と考えられる。