「ロシアに落ちたものと同じ大きさの隕石が地球に接近してきた場合、米国政府としてはどのような対策を取ればよいのか?」
「ええ、たとえば3週間の猶予があったとして……そうですね、『祈ってください』」
2013年3月19日に米下院でかわされた上のやりとり、「祈ってください」と答えたのは、NASAを率いるチャールズ・ボールデン長官だ。
隕石といえば2013年2月15日、ロシア・チェリャビンスク州で約1500人が負傷するできごとがあったばかり。宇宙のエキスパートであるNASAも、隕石の前にはお手上げだというのか。
「小さい」隕石が落ちれば街は軽く消し飛ぶ
ロシアでの隕石落下を受けて開かれた下院科学委員会の公聴会には、ボールデン長官を始め宇宙問題に詳しい識者が集められた。この席では、NASAの小天体探知がどの程度まで進んでいるのか、また実際に接近した際、回避は可能なのかといった問題について、議員らから質問が相次いだ。
約6500万年前、恐竜絶滅の原因になった隕石は直径10キロほどだったと考えられている。答弁に立ったNASAの担当者に言わせれば、その10分の1ほどのサイズの隕石でも、地球に衝突すれば「文明を終わらせかねない」という。
もっともNASAでは、このクラスの小天体についてはすでにその95%を把握しており、常時その動きを監視している。また実際に衝突が起きる可能性も、それほど高くないと見る。
一方問題なのは、「小さい」隕石だ。小さい、といってもその直径は50メートル級。落下すれば、街ひとつくらいは簡単に吹き飛ばす。こちらはNASAでも、その10%ほどしか把握できていない。
2月の隕石もその直径は17メートルほどで、事前に把握することはできなかった。しかしその落下では、実に20万平方メートルものガラスが割れるなどの被害があり、多くの負傷者が出たのはご存じの通り(※3月28日誤記修正)。ニューヨーク市立大学シティカレッジ物理学部のミチオ・カク教授が米CBSの番組で行った分析によれば、仮にこの隕石が空中で爆発せず、そのまま地面に衝突していたならば、その破壊力は広島型原爆20個分にも達したと見られる。さらに凄まじい被害が出たことは想像に難くない。