説明不足なのにイメージ通りにならないと手を出す
子どもの集団に的確な指示を出すのは難しいと、小林教授は指摘する。例えば100人の子どもに対して「手をつないで校庭の真ん中で輪になってください」と命じたら、どうなるか。校庭の内側と外側どちらを向けばよいのか、手のつなぎ方はどうするのか、情報が不足していて子どもは混乱してしまう。指示を出した側の手落ちだ。
体罰を繰り返す教師の場合、こうした言葉足らず、指示のミスは本人の責任にもかかわらず、「イメージした通りに子どもが動かず『お前たち、何をやっているんだ』と怒鳴りつけ、手を出してしまう」というわけだ。「でも子どもにとっては『ちゃんと説明されていないのに』と困惑してしまうのです」。
教師には、「子どもが間違えるのは、自分の指示ミスが原因」という事実を体感して分からせるような研修が必要だと、小林教授は話す。何かアクションを起こさせるにも細かく分かりやすい指示を与え、それをクリアするたびに「いいね」「OK」と声をかけて生徒の動きに「承認」を与える。教師自身が間違えたら「ごめん」と素直に謝り、成功すれば「ありがとう」と感謝するのも大切だ。また一流の指導者は、試合で負けた部員に「何が悪かったと思う」「どんな練習をすればいいかな」と本人に考えさせ、答えをみつけさせるという。
2月12日放送の「クローズアップ現代」でも、早稲田大学スポーツ科学学術院長の友添秀則氏が同様の指摘をしていた。顧問教師が部員に「どうすればできるか」を説明せずに「やれ」と命令するだけ、言葉が足りないのに自分のイメージが伝わらず部員が力を出せないと体罰に走る、という構図だ。友添氏は、顧問教師に集中する権限を生徒に委譲して練習メニューを自分たちで考えさせるなど自主性を育み、指導の際は「ここをこうしたらどうか」と具体的なアドバイスを送るのが大事だと述べた。