大阪市の橋下徹市長が、またしても「朝令暮改」だ。大阪市が行った組合活動に関するアンケートが、労働組合法が禁じる「不当労働行為」にあたると認定され、橋下市長は、いったんは「厳粛に受け止めなければならない」と神妙な表情で語った。
ところが。8時間後には「とことんいきますよ!」と態度を一変させた。何が橋下市長をそうさせたのか。
問題のアンケートは「市長の業務命令」だった
問題とされたアンケートは職員の組合活動や政治活動への関与について詳細に訪ねる内容で、2012年2月に行われた。文面では、その目的を
「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて、次々に問題が露呈しています」
と説明した上で、
「市長の業務命令」
「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」
といったかなり高圧的な文言もある。これに対して労組側が猛反発し、府の労働委員会に救済を申し立てていた。2013年3月25日になって、府労委は「組合への支配介入にあたる」として不当労働行為だと認定した。
これを受け、同日午前11時頃の囲み取材では、橋下市長は
「ルール違反とのところがあったと認定されれば、それは厳粛に受け止めなければならない」。組合に対しては謝罪もしなければいけないし、これからはきちんとルールも、しっかり守っていく」
と神妙な表情。
「不服を申し立てるかどうかは、内容を精査してから?」
という記者の質問に対しては
「基本的にはしません」
と明言していた。
労組はアンケート問題以外でも「追及の手を緩めるつもりはありません」
だが、ほぼ同時に行われていた労組側の会見が、橋下市長の怒りに火を付けたようだ。労組側の弁護団の北本修二弁護士は
「このアンケートだけではなくて、橋下さんが続けてきたこと自体が違法だと判断された。橋下さん自身は、多分、自分のやっていることは正しいと思っていたと思うんですが、自分の考え方が間違っていたということを労働委員会が命じた」
「結局は橋下さん、あるいは大阪市は、労働組合法の基本について分かっていなかった。のではないか」
「橋下さんのやったことは間違いだということがはっきりしたということなので、今度の行動を慎まれること」
「私たちとしては、この(府労委の命令の)履行があったとしても、それだけで(市への)追及の手を緩めるつもりはありません」
と述べ、今回のアンケートに対する府労委の判断で、それ以外の橋下市長の方針もすべて誤りであったとする主張を繰り返し展開した。
分限免職もチラつかせる
これに対して、橋下市長は19時半の囲み取材では、記者から
「組合との関係を是正していくという姿勢には変わりない?」
と念を押されると、
「あのねー。不服申し立てをします。ええ、やります」
と一転、対決モードに。過去に組合が選挙期間中に日ビラ配りを行っていたことなどを指摘した上で、怒りをぶちまけた。
「大阪市民が大阪市の組合に、どれほどの怒りを持っていたのか。そういうこと全部を棚に上げて、今回の1件でね、なーんか鬼の首を取ったような形で自分たちが全て正しいんだ、と。『橋下市長とことん謝れ』『とことん襟を正せ』違いますよ!」
「申し訳ないというメッセージも真っ正面から受け止められない組合なら、とことんいきますよ!」
橋下市長は「他の訴訟や手続きにも影響する」と述べており、弁護団がアンケートの件にとどまらず批判を展開したことに反発している模様だ。翌3月26日には、「対立構造にいくなら分限免職の適用についても厳格にやっていく」と、さらに態度を硬化させている。
一連の橋下知事の行動を報じる記事のコメント欄には、
「政治の世界に『キレキャラ』は不要」
「何でも思い通りになると思うなよ橋下」
といった冷ややかな声が目立っている。ただ、橋下市長を批判するコメントでも、
「労働組合を支持するわけではない。公務員の勤務時間内の労働組合活動はどう考えても認められない」
といった条件付きのものが多く、手放しで労組側を支持するという声は非常に少ない。