携帯電話「速さ」戦争、もはやオワコンに ソフバン「パズドラ」TOBで見えた次の一手

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   ソフトバンクモバイルが、「パズドラ」のガンホー・オンライン・エンターテイメント株式を公開買い付けへ――このニュースに、「なぜ携帯会社がゲーム会社を?」と疑問を抱いた人もあるかも知れない。ソフトバンクの狙いはどこにあるのか。

   ガンホーは1998年設立、2000年代前半にはPC向けオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」のヒットで名を馳せた。近年はスマートフォン・タブレット向けのパズルRPG「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」が累計1000万ダウンロードを突破、2月の売り上げは前年比12.8倍の100億円にまで達している。

「コンテンツ」勝負の様相が強まる

ソフトバンク・孫正義社長の次の一手は?(12年10月撮影)
ソフトバンク・孫正義社長の次の一手は?(12年10月撮影)

   ソフトバンクによれば、スマートフォン&タブレット市場は今後もさらなる拡大が予測され、それに伴い通信事業者間の競争は「ますます激化していく」ことが見込まれるという。すでに現在携帯3社が、「戦争」とも評される熾烈な戦いを続けていることはご存じの通りだ。

   これまで各社はiPhoneに代表される最新端末や、ネットワーク増強による通信の「速さ」「つながりやすさ」、そして各種サービスの充実などを武器に、利用者の獲得を図ってきた。ところがソフトバンクは、すでに局面は変わりつつあると述べる。その新たな戦場が、「動画・電子書籍・ゲームといったモバイルコンテンツ」だという。

「魅力的なサービス・コンテンツは、それ自体で大きな収益を得ることができる上、移動体通信サービスの差別化に際して重要な要素となり、データ通信料収入の更なる増加につながっていくと当社は考えております」(同社記者発表文より)

   端末や通信速度といった「ハード」部分より、ゲームを始めとするコンテンツという「ソフト」の充実が、これからは問われてくるという認識だ。

   過去のハード・規格競争でも、コンテンツの充実度が勝敗を決した例は数知れない。「VHSベータ戦争」では、アダルトビデオの優劣、多寡で差がついたと見る向きもある。ソフトバンクは「パズドラ」に代表されるゲームが、これからの勝負を左右するとにらんだわけだ。

   CyberZ(東京・渋谷区)がソーシャルゲームユーザーを対象に行った調査(13年2月)でも、スマホを購入した理由として44.9%が「ゲームアプリが充実しているから」と答えた。また68.1%がスマホ購入後「ゲームで遊ぶ時間が増えた」といい、「ゲーム」がスマホ選びの1つの訴求力になっていることがうかがえる。

携帯各社、LINE、アマゾンも入り乱れ

   モバイル向けのゲーム提供は、アップルやグーグルといったOSメーカー、あるいはGREE、MobageなどのSNSが主役を張っていた。しかしソフトバンクを始め、このところ通信キャリアの巻き返し、また新規参入組の躍進が目立つ。

   たとえばNTTドコモは12年12月、独自のゲーム提供サービス「dゲーム」を立ち上げた。キャリアの魅力強化を目指すのはもちろんのこと、ゲームが持つ「国際的な競争力の高さ」にも期待し、海外進出に強い意欲を示す。

「音楽や動画などの場合はニーズが高い現地のミュージシャンやタレントのコンテンツをそろえる必要がありますが、ゲームなら言語などのローカライズさえできれば、そのまま海外に持っていくことができる。26日からは海外初展開として、中国での提供をスタートしました」(ドコモ広報担当者)

   通話・メッセージアプリとして急成長を遂げるLINEも「LINE GAME」としてゲーム配信を12年7月に開始、7か月で累計1億ダウンロードを突破した。LINE本体との連携も生かし、独自のプラットフォーム構築を成功させつつある。また通販の雄・アマゾンも12年11月からゲームを含むアプリの日本向け配信を開始、自社製タブレット「Kindle Fire」シリーズとともに売り出す。ともに「ゲーム」を看板に、自社のサービスにユーザーを囲い込む動きが進んでいる。

   矢野経済研究所の推計(13年1月)によれば、モバイル向けゲームの代名詞である「ソーシャルゲーム」の13年度の国内市場規模は4200億円に達するとみられ、今後も堅調な市場拡大が見込まれるという。

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