ロシア中央部の都市エカテリンブルグで1人の少女が自殺した。部屋からは日本の漫画「デスノート」のロシア語版が見つかった。彼女の自殺に影響したのではないか――ロシアのラジオ局「The Voice of Russia」(ロシアの声)が同国の通信社インターファクスの記事を引用して日本語で報じたこともあり、日本でも関心が高まっている。
捜査当局、少女の部屋から「デスノート」を押収
「デスノート」は2003年から原作・大場つぐみ、作画・小畑健で「週刊少年ジャンプ」で連載されて大ヒットした。名前が書かれると死んでしまう死神のノート「デスノート」を使って、主人公・夜神月(キラ)が犯罪者や悪人に制裁を与え、理想の世界を作ろうとするストーリーだ。実写映画化やアニメ化もされ、日本のみならず世界的にも人気が広がった。ロシアでは、集英社がライセンス契約を結んだ現地企業が出版している。
ロシア国内の報道によると、2013年2月20日、エカテリンブルグで15歳の少女が飛び降り自殺をした。地元の捜査当局は自殺の原因を探るため、彼女の部屋を調べ、遺書のほかに「デスノート」4冊を押収した。
「デスノート」が自殺の原因、または精神状態に何らかの影響を与えたかどうか調査するためだという。
さらに保護者らによる団体「ウラル保護者委員会」に所属する活動家は、「デスノート」は子どもの精神状態に悪影響を及ぼすとして、大統領から任命される「児童の権利に関する全権委員」のパーヴェル・アスタホフ氏にロシア内での頒布禁止を求めた。
ウラル保護者委員会はこれまでも性的な内容が含まれていることを理由に児童向け図書の販売禁止を求める運動などを繰り返しており、「デスノート」に対しても自殺教唆だと主張しているという。
事件はテレビのニュース番組でも取り上げられ、ロシア国内で話題になっている。
過去にも海外では「キラ」名乗る殺人犯や回収騒ぎも
自殺に関係したのではないかと疑われている「デスノート」だが、原作では主人公・夜神月(キラ)が犯罪者や悪人を裁くためにノートに名前を次々と書き込むわけで、大きなズレがある。
日本では「人を殺していく話がメインの『デスノート』と、自殺と何の関係があるの?」と疑問の声が上がった。
さらに「デスノート」が全12巻であるにもかかわらず、少女の部屋から「4冊」が見つかったことについて、「4巻じゃまだ序盤じゃん」「影響受けるぐらいハマってたなら全巻持ってるやろ」と強引な結びつけではないかと見る向きもある。
「デスノートで自殺したくなるなら、デスノートが大ヒットした日本でもっとオタクが死んでるわ」とばかばかしいと言う意見が多数だ。
集英社に話を聞くと、「事実関係を把握しておりませんので、回答を差し控えさせていただきます」とのことだった。
しかし、これまでも「デスノート」は海外で人気の高まりと同時に、いくつかの国で物議をかもしてきた。2007年、ベルギーで主人公「キラ」を名乗る殺人犯が現れたり、中国では海賊版が横行し、当局が子どもへの悪影響を考えて取り締まりが行われたりする騒ぎが起きた。
日本では2006年に週刊少年ジャンプの連載が終了した同作だが、2013年3月にもアメリカで中学生が自作の「デスノート」に同級生や教員の名前を書いていたとして停学処分を受ける事件が起きるなど、依然として話題を集めている。