福島原発で異変――そんなニュースが飛び込んできたら、多くの人が真っ先に心配するのが、放射性物質の漏出の有無だろう。幸い現在では一般の国民もウェブを通じ、公的機関が発表する各地の放射線量をほぼリアルタイムに知ることができる。特に福島県内には多数の観測局が東日本大震災後新設されており、きめ細かい状況が確認可能だ。
そんな中、「原子力と安全」問題の総本山・原子力規制委員会のウェブサイトが少々心もとない。福島第1原発周辺の放射線量についての情報が、「調整中」などとされ見られない箇所が多いのだ。
24地点中7地点が「調整中」
2013年3月18日、福島第1原発で停電が発生、燃料貯蔵プールの冷却などがストップし、復旧にまる1日以上がかかる事故があった。
震災の記憶も生々しいだけに、少なからぬ人々が公的機関のウェブサイトにアクセスし、現地の放射線量に異常がないか確認しようとした。ところが――
「このサイトの線量データ、見られない地点がやたら多くないか?」
そんな指摘が相次いだのは「環境防災Nネット」というウェブサイトだ。原子力規制委員会が設置するもので(実際の作成は原子力安全技術センター)、立派な「公的」ウェブサイトと言っていい。
このウェブサイトでは各地の原発周辺の線量がリアルタイムに表示されており、福島原発についても、付近の24か所の計測値を地図上で閲覧できる。ところがやたら目立つのは、「調整中」の表示だ。3分の1近い7か所に「バツ」マークが付き、数値を閲覧できない。しかもその大半は、第1原発から10キロ以内という重要な地点だ。特に大熊町夫沢の計測地点は、第1原発の「最寄り」に当たる。
原子力規制委員会自体の公式サイトでも、福島県原子力センターのウェブページにリンクする形で原発周辺の線量を確認できるが、こちらもやはり24か所中7か所が表示なしのまま。500か所以上の計測値が一覧できる文部科学省のページと比べると、貧弱と言わざるを得ない。
震災で観測局が壊滅的被害受ける
原因は、情報の「古さ」。確かに線量自体は更新されているが、肝心の計測地点が、震災以前そのままなのだ。
震災前、福島県には24か所の観測局(モニタリングポスト)が設置されていた。ところが震災ではこれらの観測局も壊滅的な被害を受け、うち4局(浪江町の2局、大熊町・富岡町の各1局)が津波で流され、ほかも1局を除き停電で稼動をストップした。その後順次復旧が進んだものの、今なお津波被害の4局、そして電力が届いていない大熊町と楢葉町の計3局が回復できず、また明確な目処も立っていない。
文科省はこうした状況に対応して、新たなモニタリングポストを相次いで設置し、線量表示ページもこれらの新設局を含むものに切り替えた。ところが規制委のページでは、今なお震災前からの計測地点からの情報しか閲覧できない。そのため、文科省のそれに比べ著しく情報が少ない、という状況になっている。
運営する原子力安全技術センターに情報更新の予定を尋ねたが、「我々の一存では……」というばかり。「(文科省など)他のサイトで補完されているので、そちらのほうをご覧いただければ……」と心もとない。