パソコンを新調するとき、面倒なのがこれまで使っていたマシンの処分だ。いわば個人情報の塊の上、リサイクルが義務付けられているため普通にゴミとして出すこともできない。
そんな中、このところ「パソコンの処分、『無料』で請け負います」という回収会社の動きが目立ってきた。業者によっては、送料も着払いとし、まさに「完全無料」をうたうところも少なくない。場合によっては1台当たり数千円がかかる回収を、なぜ無料でまかなえるのか。そして、気になるデータはきちんと守られるのか。
「ブラウン管、海外ではまだ需要があるところも」
「資源の有効な利用の促進に関する法律(通称パソコンリサイクル法)」に従い、パソコンメーカーは自ら販売した製品は、基本的に無料で回収に応じている。ただあくまで回収義務があるのは自社の製品のみであるため、たとえばディスプレーと本体が別メーカーの場合、それぞれのメーカーに回収を依頼しなくてはいけない。また制度上、古い製品や自作パソコンの場合、1台3000~4000円前後の費用がかかってしまう。
こうした手間や費用の節約をうたうのが、上記のような回収業者だ。たとえば「いっとく」(東京・八王子市)が運営する「パソコンリサイクルセンター」は、デスクトップパソコン、ノートパソコン、液晶モニターについては、一定の条件さえ満たせば古い製品、壊れた製品でも、料金着払い・無料で引き取るサービスを行っている。条件を満たさない関連製品も、送料は利用者負担だが処分自体は無料に設定されている。今回話を聞いたいくつかの業者も、基本的に同様の仕組みを取っていた。
では、回収されたパソコンはどのように利用されるのか。
業者に届いたパソコンは、その状態や年式、性能に応じてまず分類される。新しいもの、状態のいいものはデータ消去の上、修理するなどして中古パソコンとして販売に回し、そうでないものは分解して使える部品を取り出すという。
面白いのは、年式が古いパソコンにも、ちゃんと使い道があることだ。「パソコンファーム」を運営するハイブリッジコンピュータ(埼玉・三郷市)では、こう話す。
「国内では売れないようなスペックが低いものでも、アジアの国々ではまだ需要があるところもあります。たとえばブラウン管などは海外でもさすがに最近需要が減っていますが、逆に今やどこも作っていないため、時々ほしがる業者が出てきますので、状況を見計らいながら回収を行っています」
「古いパソコン」でも無料で回収する理由
それでもなお使い道がないようなパソコンも、大切な資源だ。
パソコンには金などの貴金属やレアメタルなど、価値が高い金属が多数使われている。各社ではこうした金属部品をばらした上で、専門の業者に売却しているという。「パソコン処分.com」のリブート(東京・足立区)によれば、「古いパソコンほど製造にお金がかかっており、金などが使われていることも多いんです」。普通なら回収にお金がかかってしまうようなオンボロパソコンも、いわば宝の山ということか。
このようにさまざまな角度から再利用することで、「無料回収」というコストを差し引いても、きちんと利益を上げることができるという。
となると利用者として気になるのは、パソコンに残されたデータの問題だ。多くの業者ではやはり無料でデータの消去も請け負っているが、ユーザーの中には不安を訴える人も少なくない。もちろん各社もその重要性は承知しているようで、取材に対してその管理の万全ぶりを強調した。
たとえば「データ消去証明書」の発行やハードディスク返却をオプションで行っているという「パソコンリサイクルセンター」、個人情報保護への取り組みを示す「プライバシーマーク」を取得した「パソコン処分.com」、依頼者の前でハードディスクを物理的に破壊してみせるという「パソコンファーム」など、それぞれの方法で安心ぶりをアピールする。
「パソコン回収.com」のアールキューブ(埼玉・所沢市)では、引き取ったパソコンをすべてコード番号で個体管理、消去が確認できるまで指定の施設から出さない、という対応を行っているという。「セキュリティーは会社の命」と言い切るだけに、社員教育の徹底や、ネットワーク機器など依頼者が気づかないような箇所に残ったデータのチェックなども心がけているとのことだった。