いまFX市場を動かしているのはデイトレーダー
1ドル90円を超えてきて、そろそろ「高値づかみ」になる恐れもあり得るというのに、米ドル買いの勢いは衰えない。「ミセス・ワタナベ」は、まだ円安が進むと読んでいるわけだ。
とはいえ、売買は活況だが、FX取引のすそ野が広がっているわけではない。前出の外為どっとコム総研の神田卓也・調査部長は、「最近は初心者の女性や年配者も増えてはいますが、全体的にはまだ少ない。いまFX市場を動かしているのはデイトレーダーや、それ以上の超短期売買を繰り返す投資家です」と話す。
そのため、売買高が過去最高を更新する一方で、「取引残高がなかなか積み上がっていきません」と指摘する。2006~07年ごろの「ミセス・ワタナベ」は、取引層を拡大しながら売買高を増やしていったが、その点ではまだ広がりに欠けており、様相が異なるという。
残高が伸びない要因は、日米に金利差がないことだ。金利差はFX取引のメリットの一つ。たとえば、米ドルの金利が3.1%で、日本円の金利が0.1%だった場合、この条件で円を売って米ドルを買えば、年間3%の金利収入が得られる(日本円と米ドルの為替レートに変動がない場合。ただし、同じ条件で米ドルを売って日本円を買うと年間3%を支払うことになる)。
明るさが見えてきたとはいえ、米国も量的緩和を継続している。一方、日本も2%の物価上昇目標を設けてはいるが、なお足元の金利は低く抑えられていて、現状では「金利差」の魅力はない。
ただ、「米国には金融緩和の解除を模索しはじめたとの思惑が働いていて、金利上昇が見込めそうです」と、神田氏。多くの個人投資家が動き出すのは、むしろこれからのようだ。