「つながりやすさ」で攻勢を強めるソフトバンクモバイルが2013年3月21日、同社が買収したイー・モバイルの帯域を活用したサービスを新たに始めると発表した。ソフトバンクの次世代通信「LTE」対応端末は、2.1ギガヘルツの帯域を利用してきたが、イー・モバイルの1.7ギガヘルツ帯でも使えるようになる。
あわせて、「つながりやすくなった」内容を細かく説明し、根拠に疑問を呈している一部メディアに反論した。ネットワークの「つながりやすさ」だけをテーマに2時間も記者会見が開かれるのは異例。
まずは池袋駅周辺でサービス開始
新サービス「ダブルLTE」は3月21日、混雑が激しい都市部、特に池袋駅を中心とする山手線沿線で開始。現時点ではiPhone5、iPad mini、iPadのRetina ディスプレイモデルの3機種が対応している。
「1台のiPhone5が、どっち(のネットワーク)が混んでいるかをリアルタイムで捕捉しながら、混んでいない方につながる仕組み」(孫正義社長)
だといい、「ダブルLTE」対応機種の通信量(トラフィック)がイー・モバイルの帯域に移行することで、既存のソフトバンクの帯域の混雑が緩和されると説明している。
孫社長は、イー・モバイル買収が通信状況の改善に果たした役割は「絶大」だとしながら、すでに周波数帯域が割り当てられているイー・モバイルを買収したことに対する批判については、
「イー・モバイルと交渉する前に、正式にKDDIが買収の申し込みをしていた。我々がアクションを起こさずにKDDIが起こしていれば、(イー・モバイルの帯域がKDDIに割り当てられることになり)電波の不公平さが、さらに広がっていた」
と反論した。
「つながりやすさ」調査は「継続的に第3者がやっているもの」
CMで「つながりやすさナンバーワン」をアピールしている根拠は、音声通話は調査会社「イプソス社」が行った月間19万件の音声通話テスト、パケット通信はヤフーの防災アプリの月間1億5000万件の通信ログを解析した結果だ。調査の妥当性に疑問が寄せられていることについては、
「思い立ったように200~300か所でやったものではなく、継続的に第3者がやっているもの」
「勝手な定義で、(ヤフーという)グループ会社でやってると思われるかも知れないが、1億5000万件のデータを勝手に取り出すことは、なかなかできない」
と反論した。
時間帯や場所別のデータも紹介されたが、大半がソフトバンクが1位だったと紹介された。ただし、ゴルフ場やスキー場といった山間部では、依然としてNTTドコモに一日の長があることも明らかにされた。
「小セル化」で「パケ詰まり」緩和
電波が通じていても実際には通信しにくくなる「パケ詰まり」という現象にも言及。
「瞬間風速的に(通信速度が)他社を上回ったことに意味はない。ネットワークの基地局には同時に何百人も接続する。1人しか接続していない時の理論値をもって、メディアでも『光ファイバーなみの通信速度がLTEで実現される』という嘘を言っている」
と、通信各社のPR戦略を批判しながら、カバー範囲が狭い基地局を大量に建てる「小セル化」でパケ詰まりを緩和しているとした。割り当てられる周波数帯域は限られているため、出力が大きな基地局よりも「小セル」の方が通信効率が優れているからだ。
現在主流の通信形式「3G」では、ソフトバンクは12年7月から「プラチナバンド」と呼ばれる帯域の運用を開始。当初は13年3月までに基地局を1万6000局建てることを目指していたが、大きく前倒して2万局の建設が予定されている。
利用者数を基地局数で割ると、1局あたりの利用者はドコモが600人、KDDI(au)が350人なのに対して、ソフトバンク150人に過ぎないとして優位性を強調した。