JAL稲盛名誉会長、取締役退任会見でインサイダー批判に不快感 「これが社会なのか、世の中なのか」

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   日本航空(JAL)は2013年3月19日、稲盛和夫名誉会長が3月31日に取締役を退任すると発表した。引き続き、名誉会長として業績報告会に出席するなどしてJALの経営への定期的な助言を続ける。

   稲盛氏は10年2月に会長に就任。主導したJALのスピード再生は「民主党政権の唯一の成果」との指摘も根強い。稲盛氏は、かつては民主党の有力な支持者として知られたこともあって、公的支援を活用した再生については自民党などから「競争環境をゆがめている」といった批判も出ている。稲盛氏は、これらの批判に対して、「うまくいくと、それに対して色んなことを誹謗中傷する方もいる。大変心を痛めている」と、強い不快感を示した。

増資への「インサイダー」批判に反論

取締役を退任するJALの稲盛和夫名誉会長(左)。右は植木義晴社長
取締役を退任するJALの稲盛和夫名誉会長(左)。右は植木義晴社長

   稲盛氏は会見冒頭の退任あいさつの大半を

「これも、社員の方々が何としても自分の会社を回復させたいというすばらしい熱意と努力の成果。私はそれを横から支援しただけ。まさか素人で無知な私がここまでできるとは思わなかった」

と、いった関係者への感謝の言葉にあてた。だが最後に「ひとつだけ気になるのは…」と切り出し、スピード再生への批判に反論した。

「こうしてうまくいくと、それに対して色んなことを誹謗中傷する方もいる。大変心を痛めている。せっかくはい上がってきたJAL社員を含めて、『よくぞ、ここまではい上がってきた』と、温かい目で見ていただくなら良いが、それを叩くようなことが行われているのは、大変残念に思っている。『これが社会なのか、世の中なのか』と思っている」

   稲盛氏が「誹謗中傷」の念頭に置いているのが、再生手続きにともなって法人税が減免されていることと、11年3月15日にJALが取引先など8社に対して行った127億円の第三者割当増資。特に増資については、稲盛氏が創業した京セラが引き受け先に含まれていたことから、自民党の西田昌司参院議員などが、増資がインサイダー取引にあたる可能性があると主張。特に2月18日の参院予算委員会では

「再上場を当て込んだとしか考えられないんですよ!」

と批判をヒートアップさせていた(上場前の取引は法的にはインサイダー取引にはあたらない)。

「アベノミクス」には強い期待感

   この批判に対して、稲盛氏は

「今にして再上場して株価も上がったから言えるかもしれない。当時、二次破たんもありうると言われていた時に、それだけのお金を投資してくれるところは、どこもなかった。それが結果論として言われるということに、犠牲をはらって投資に応じていただいた人に寂しい思いをさせていることを残念に思う」

と改めて反論した。

   ただし、自民党政権の経済政策は高く評価しており、「アベノミクス」については

「インフレがもし進行するようであれば、非常に危険性がともなうのではないかと、若干危惧していたが、現在では、それが非常に順調にいっており、日本の景気回復もうまくいくのではないかと思って、大変期待している。安倍総理の経済政策、自民党の方々が素晴らしい経済政策をやっていく中で、今まで長く低迷した日本経済を復興させると期待している」

と強い期待感を示した。また、企業経営を手がけるのはJALを最後にしたい考えで、

「他から頼まれても、(引き受けることは)ありません」

と明言した。

787の補償交渉は安全策が済んでから

   一方、バッテリーのトラブルで運航停止が続いているボーイング787型機については、植木義晴社長は

「当社および他社事例での想定しうるすべての原因に対する全ての再発防止策を講じた上に、さらに多重の対策が講じられたと理解している。」

と対策は順調に進んでいるとの見通しを示したものの、具体的な運航再開時期については、

「連邦航空局(FAA)や国土交通省の判断が出た後に当社として決定したい」

と述べるにとどまった。また、ボーイング社との補償交渉については、

「しかるべき時期に交渉を開始する。今、そのことでボーイング社を煩わせるよりも、改善策に集中してもらいたい」

と述べ、補償を求めていく方向性を明らかにした。

   すでに、787が運航を停止した1月16日から3月30日の間に、収支ベースで7億円のマイナスになることが明らかになっている。4~5月については、売上高が23億円、費用が12億円それぞれ減少するとみており、収支は11億円のマイナスになる見通しが新たに明らかにされた。

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