民間事故調報告書「米国が『空だき』懸念していた」
4号機は2011年3月15日に水素爆発を起こした当時、その行方が最も心配された。福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の「調査・検証報告書」を読むと、燃料プールへの注水が不可能となり、核燃料がむき出しとなって破損、溶融してコンクリートと反応し大量の放射性物質を放出するという「最悪のシナリオ」が描かれていたことがわかる。
同書によると、4号機の水素爆発により米国からはプールが「空だき」になっていないかとの懸念が寄せられたという。政府はその後プールに水が入っていることを自衛隊の空撮映像で確認したが、建屋の最上階にあるプールが構造的にもろいままであるのに変わりはなかった。久木田豊・原子力安全委員会委員長代理(当時)は「燃料が溶けて、さらに火災が起こってプールの底が抜けてバラバラっと燃料棒が落ちていく。それが最悪」とし、近藤駿介・原子力委員長(同)も「とくに余震が起こった場合、底が崩落し、水が漏洩し、注水停止状態になる」ことを怖れたとしている。菅直人首相(同)は退任後に「今回の危機では、使用済み燃料プールがもっとも怖かった」と振り返った。プールへの安定的な注水と、構造的な補強が緊急課題になっていたという。
現在の4号機の耐震性については、東電の2012年8月30日発表の資料に書かれている。東日本大震災と同程度の地震が発生しても「使用済燃料プールを含め原子炉建屋の耐震性が十分であることを確認しました」とある。プール底部の補強だけでなく、プールの壁は厚さ140~185センチの鉄筋コンクリート製で、プールを支える壁も同等以上の厚さがあると頑丈さをアピール。年4回、建屋の傾きや外壁面の測定、目視点検、コンクリート強度確認を実施しているという。万一プールから水がこぼれたとしても、その水を受けるためのタンクがプール横に併設されていて、水はそのまま配管を通ってプールに戻る仕組みになっている。
冷却システムも増強されているはずだが、今回のトラブルで、原発事故から2年以上が経過した今も燃料プールの冷却が失われる危険性と隣り合わせであり、「最悪のシナリオ」が完全に消え去ったわけではない現実を突きつけられた。